猫と人類の「Win-Win」な関係は1万年前から!メソポタミアで始まったネズミ退治【猫柄図鑑】

世界各地へと拡がっていった猫

始まりの地はメソポタミア

 リビアヤマネコの家畜化が初めてスタートしたのは、約1万年前、メソポタミア周辺(現在のイラクのあたり)と考えられています。チグリス川とユーフラテス川流域のよく肥えた土地で、人類の農耕と定住が始まりました。同時に、人々は穀物を食い荒らすネズミに頭を悩ませるようになります。

 穀物の被害をどうにか食い止めたい人類と、ネズミが大好物のリビアヤマネコ。人類と野生のヤマネコのまさにWin-Win な関係は、ここから始まったのです。

古代エジプト人と猫の特別な関係

 21 世紀に入るまで、リビアヤマネコとの最初の出会いと、その後の猫への家畜化の始まりは古代エジプトだと考えられていました。当時のナイル川流域は一大穀倉地帯だったので、ネズミによる被害も相当のものだったと想像されます。それに加えて、古代エジプトの遺跡の壁画には猫がしばしば登場し、丁重に葬られた猫のミイラまで見つかっているからです。しかし、地中海に浮かぶキプロス島の約9500 年前の遺跡から、人間と一緒に埋葬されている家畜化途中のリビアヤマネコが見つかったことで、古代エジプト起源説はくつがえされました。

 とはいえ、古代エジプトにおける人間と猫の関係は、とても特別なものでした。壁画に猫がよく登場するようになるのは3500 年前頃。日本では縄文時代にあたります。壁画には、人にもらった魚を食べる猫、椅子の脚につながれた猫とエサの入ったボウルなどが描かれています。つまり、この頃にはすでに猫の家畜化がほぼ完了し、古代エジプト人が私たちと同じように猫と一緒に暮らしていたということにほかなりません。

 それどころか、古代エジプトの一部地域では猫を女神の化身「バステト」として崇め、バステトをまつる祭典を毎年のように開催するほどに心酔していました。古代エジプトでは多くの人々が猫を飼い、猫が死ぬと家族全員が喪に服し、なきがらを猫専用の共同墓地に埋葬していました。それほどに猫は大切に扱われていたため、うっかり猫を殺してしまった者は死罪に処されたという恐ろしいエピソードもあります。

古代エジプトのバステト神

猫の頭部を持つバステト神は、性愛や多産などの繁殖のシンボルとして崇拝されていました。

古代ギリシャの猫は気の毒な身の上?

 メソポタミアから古代エジプトを経て、猫がいつ頃、どのように世界中へ広がっていったのかは定かではありません。文献や発掘品などから推察するかぎり、古代エジプトの次に猫が姿を現すのは古代ギリシャです。約2500年前の大理石の彫刻には、つながれた猫と犬が向き合い、戦いを待つ様子が描かれています。この地では、猫はかなり不当な扱いを受けていたのではないでしょうか。

 続く古代ローマでは、約2000年前の文献やモザイク画に、猫のしぐさや行動が記されています。

 扱いはさておき、この頃の古代ギリシャや古代ローマでは、猫はすでに珍しい存在ではなかったようです。

【出典】『猫柄図鑑』監修:山根明弘

【書誌情報】
『猫柄図鑑』
監修:山根明弘


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