理由を聞いても「別に」と黙り込む…子どもの反抗的な態度は性格ではなく脳の疲れが原因だった!?【子ども脳疲労】

脳が回復すると、自分の状態を言葉で伝えてくれる

言葉に置き換える力が育つ

 子どもは不機嫌になると、黙り込んだたり、強い態度に出たりします。理由をたずねても「別に」「何でもない」としかいわず、不満や困りごとを言葉で伝えてくれないことはよくあります。

 こうしたとき、子どもは自分の状態をうまく言葉にできず、行動で示している可能性があります。本当は「疲れている」「今は話しかけないでほしい」「少し助けてほしい」「自分でもう少しやってみたい」などと思っているのに、それを整理して表現する力が追いつかないのです。

 これには、「おりこうさんの脳」と「こころの脳」が関係しています。「おりこうさんの脳」は情報を蓄積し、言語能力を司る部分です。そして「こころの脳」は、自分のなかにある気持ちや要求をいったん整理し、「何をどうしてほしいのか」「なぜそう感じているのか」を組み立てる役割を担います。この2つが連携して十分に機能していることで、自分の状態を言葉として外に出すことが可能になります。

疲れが取れると理性的につたえられる

 脳に疲れがたまっているときは、この連携が弱まります。頭のなかで情報や感情、さまざまな考えが混ざり合い、まとまりのないまま外に出てしまうのです。言葉にする前の段階であふれてしまうため、結果として無言になったり、反抗的な態度を取ったり、わざと困らせるような行動に出たりします。しかし、それは伝える力が不足しているだけで、伝えたいことがないわけではありません。むしろ、内側には強い思いがあるからこそ、行動という形であらわれている場合が多いのです。

 一方、脳が十分に休息し、滞りなく機能しているときには、具体的な言葉が出てくるようになります。親に頼みごとをするときも、「学校の用事で帰りが遅くなったから、宿題を済ませるためにもう少し時間がほしい」というふうに、状況と理由を添えて伝えられるようになります。あるいは、「疲れているから、今日の宿題は休んでからやりたい」と自分の状態を説明することができます。行動で示すのではなく、言葉で理性的につたえられるようになるのです。

 子どもが自分の状態を言葉で示せるようになると、親子間の認識にも変化が訪れます。親は子どもの意図を正しく受け取ることができ、誤解して事態がこじれるのを防げるのです。

 ここで大切なのは、脳を休ませる時間を確保しつつ、子どもが主語と述語を備えた正確な文章を使えるように支えることです。何をどうしたいのか、なぜそうしたいのか、具体的で筋の通った伝え方を普段からさせるようにすると、しっかりとしたコミュニケーション能力が育っていきます。

 また、すぐに正解を与えるのではなく、「どうしてほしいの?」「今はどんな気持ち?」と問いかけ、子どもが自分で言葉を探す時間を与えることも大切です。こうした積み重ねが、子どもの言語化能力の向上へとつながっていきます。

 行動で示すしかなかった段階から、言葉で示せる段階へ。その変化は、脳が十分に機能し、自分を扱える力が育っていることのあらわれです。まずは回復できる土台を整え、そのうえで言葉を使う機会を大切にする。それによって、自分の状態を的確に伝えられる子どもに育っていきます。

脳が回復すると言葉で伝えられる 

脳が十分に働いていると、自分の状態を整理し、行動ではなく言葉で伝えられるようになります。

【出典】『子ども脳疲労』著:成田奈緒子

【著者紹介】
成田奈緒子(なりた・なおこ)
小児科医・医学博士・脳科学者。発達脳科学を専門とし、子どもの睡眠や生活リズムと脳の発達の関係を長年研究。医療現場で多くの親子と向き合うなかで、子どもの不調の背景には睡眠不足や過干渉など家庭環境の影響が大きいことに着目する。脳の発達段階に即した子育てのあり方を提唱し、講演・執筆活動を通じて広く発信。親子支援事業・子育て科学アクシスを主宰し、保護者向け講座や教育支援にも力を注いでいる。著書に『誤解だらけの子育て』(扶桑社)、『子育てを変えれば脳が変わる こうすれば脳は健康に発達する』(PHP 研究所)、共著に『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SB クリエイティブ)などがある。

【書誌情報】
『子ども脳疲労』
著:成田奈緒子


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