子どもの認知発達は「体験すること」で育つもの。乳児期に大切にしたいポイント7つとは【発達が気になる子の認知遊び】

乳児期・幼児期・学童期大切にしたいこと
| ☑ 7つの領域は互いに関連し合い、遊びや生活経験を通して育つ ☑「安心して試す→考える→できた」の循環が認知発達の原動力になる ☑ 発達段階に合った関わりが、生活の理解と行動の安定を支える |
発達の時期に応じて、大切にしたい関わりの視点
乳児期・幼児期・学童期では、認知発達の育ち方や必要な支えが大きく異なる時期です。
ただし、どの時期においても共通しているのは、認知発達が「教えられるもの」ではなく、遊びや生活経験のなかで少しずつ積み重なっていく「体験するもの」という点です。
乳児期は、安心できる関係のなかで感覚を通して世界を知ることが土台になります。幼児期には、試す・考える・やり直す経験を重ねながら、認知の幅が広がっていきます。学童期では、それまでに育った力を使って、見通しをもった行動や学びにつなげていくことが大切になります。
発達段階に合った関わりを選ぶことが、「安心して試す→考える→できた」という循環を生み、生活の理解と行動の安定を支えていきます。
●乳児期のポイント(0~2 歳頃)
①知覚(見る・聞く・触れることで世界を知る)
乳児期は、五感を通して外の世界を感じ取り、脳にたくさんの情報を蓄える時期です。多様な感覚経験が、物の形や距離、音の方向、質感などを理解する土台になります。
大切なのは、いろいろな感覚を安全な環境で体験すること。色の違うおもちゃ、ガサガサ音の鳴る布、冷たい・やわらかいなどの素材に触れることが、知覚の幅を広げます。抱っこやスキンシップも触覚・前庭覚を整える大事な刺激です。
② 注意・処理(見る・聞く対象を選び、集中する)
子どもは最初、動くものや音に自然と注意を向けます。おとなの声や顔に興味を示すことも、注意の芽生えです。必要なものに目を向け、しばらく気持ちを向け続ける力を育てることが大切です。
短時間でもひとつの遊びに集中できるよう、安心できる環境で関わりましょう。音の鳴るおもちゃを追う、名前を呼ばれて振り向くなどの経験を重ねるうちに、「必要な刺激に注意を向ける」力が少しずつ育っていきます。
③記憶(覚える・思い出す力の基礎づくり)
乳児期の記憶は「感覚記憶」や「短期記憶」から始まり、くり返しの体験によって「長期記憶」へと育ちます。
毎日同じ歌や絵本、同じリズム遊びをくり返すことで、子どもは「次にこうなる」と予測し、安心して楽しむようになります。
この 「覚えている」「思い出す」経験が、後の学習や生活習慣(着替え・食事など)の理解につながります。くり返しのなかで安心と記憶を育てることがポイントです。
④ 言語思考(安心のなかで言葉を育てる)
乳児期は、言葉を「理解する力」が先に育ちます。話せるようになる前から、おとなの語りかけを聞くことで、言葉と状況のつながりを学びます。「おむつ替えようね」「バイバイしようね」など、生活に結びついた短い言葉をくり返し聞くことが、言語の基礎をつくります。
さらに、指差しや表情などの“非言語的コミュニケーション” を通して、「気持ちを伝える」経験を積むことが、のちの言語思考の育ちを支えます。
⑤実行機能(体を自由に動かす)
乳児期は、実行機能の「前段階」として、自分の体を思い通りに動かす経験が大切です。手を伸ばして物をつかむ、はいはいして目的地に行くなど、自発的に行動するなかで、「やりたい→動く→できた」という自己調整の基礎が育ちます。
1 歳を過ぎると「やってみたい」「もう一回!」という意欲が出てきます。自分で試し、達成する経験を妨げずに見守ることが、後の計画性・切り替え力・自己制御力につながります。
⑥ 社会的認知(人との関わりを理解する)
乳児期は、人と関わることそのものが社会的認知の出発点です。抱っこされたときの安心感、笑い返してもらう喜びが、「他者は自分を理解してくれる存在」という信頼の土台になります。おとなの表情を読み取ること(共感の芽)や、相手のまねをすること(模倣の力)は、社会的認知の初期的な形です。
おとなが「うれしいね」「びっくりしたね」と言葉にして気持ちを代弁することで、子どもは他者の感情を少しずつ理解していきます。
⑦メタ認知(自分の気持ち・行動を感じ取る力の芽ばえ)
乳児期では、まだ「自分を客観的に見る」力は発達していませんが、「自分の感じたことをおとなに言葉で受け止めてもらう」ことが、メタ認知の芽を育てます。
泣いたときに「びっくりしたね」「いやだったね」と共感してもらうと、子どもは「これは“ いや ” という気持ちなんだ」と少しずつ内面を整理できるようになります。
安心できるおとなに気持ちを受け止めてもらう経験が、のちに「自分の気持ちを理解し、落ち着ける」力につながります。

【出典】『発達が気になる子の認知遊び』著:藤原里美
【著者情報】
藤原里美(ふじわら・さとみ)
一般社団法人チャイルドフッド・ラボ 代表理事/臨床発達心理士/保育士
公立保育園・東京都立梅ヶ丘病院・東京都立小児総合医療センター・明星大学非常勤講師を経て現職。
発達障害のある子どもの療育、家族支援を行うとともに、園の巡回や発達支援の研修など、支援者育成にも力を注ぐ。「子どもを変えずに、子どもの周りの世界を変える」支援方法により、現場や家庭で実現可能な実践方法を発信している。
【書誌情報】
『発達が気になる子の認知遊び』
著:藤原里美
発達が気になる子といっしょに!
楽しい遊びを通して、子ども自身が困っていることの解決をめざす大人気シリーズ。
認知発達とは、見る・聞く・記憶する・覚える・考える・予測するなど、情報をキャッチし、物事を理解して考える力が育っていく過程を指します。
わたしたちは日常のなかで多くの情報を受け取り、その情報をあたまのなかで「整理して」、「次にどうするかを判断」しています。
認知発達はこの一連の過程を支える基盤であり、学習だけでなく、生活全般や人との関わり方に深く関係しています。
・遊びが続きにくい
・集団遊びに入りづらい
・指示が入りにくい
・切り替えが難しい
・ルールのある遊びが苦手 など発達が気になる子にとって、
認知発達を育む遊びは特に重要です。
本書で紹介する150個の「認知発達遊び」は、日常のなかで遊び、関わりながら、
その子のペースで認知の土台を育てていくためものです。
認知発達をつぎの7つの領域に分けて解説し、それぞれの領域を育てる具体的な遊びの提案をしています。
1知覚
2注意・処理
3記憶
4言語思考
5実行機能
6社会的認知
7メタ認知
診断の有無にかかわらず支援したいとき、「教える」より「育てる」関わりを大切にしたい場面などで、
それぞれの発達段階にあわせながら、無理なく取り入れられる遊びを紹介します。
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