子どもの得意と不得意のアンバランスを理解する!脳が理解しやすい「得意なルート」の探し方【発達が気になる子の認知遊び】

発達が気になる子の「つまずき」をどう捉えるか

☑特性による認知の偏りを理解する視点
☑行動の背景にある感情と経験を読み解く
☑強みを活かし環境と関わりを調整する

 子どもの発達は直線的に伸びていくものではなく、波のように揺れながら進んでいくものです。ある領域がぐんと伸びたかと思えば、別の領域が追いつかず、不安定さとバランスを取ることをくり返しながら成長していくといえます。

 特に発達が気になる子どもたちでは、この「発達の凹凸」が大きく現れ、得意なことと不得意なことの差が生活のなかで目立ちやすくなります。

 「落ち着きがない」「集中できない」「人の気持ちがわからない」といった行動の背後には、脳の情報処理の特性があることも考えられ、その仕組みを理解することが支援の第一歩となります。

発達を「どのように理解しているか」で捉える

 人が環境のなかで行動するとき、脳では常に多層的な情報処理が行われています。

 たとえば、目や耳などの感覚器で情報を「知覚」し、そのなかから必要な情報に「注意」を向け、状況を「記憶」や「言語思考」で整理しながら、「実行機能」で行動を計画し、相手の意図を「社会的認知」で読み取り、最後に自分の行動を「メタ認知」で振り返る——という状態になります。

 たとえば、注意・処理が未熟な子は、先生の話を聞いていても周囲の物音が気になり、必要な情報を選び取れないことがあります。実行機能が弱い子は、「あとで片づけよう」と思っても行動の手順を組み立てられず、結果的に忘れてしまうことがあります。このように、一見「やる気がない」「聞いていない」ようにも見える行動は、認知の基礎的な機能のアンバランスが原因となっていることもあるのです。

 支援において重要なのは、「なぜその行動になるのか」を理解する視点です。子どもが見ている世界の情報量や処理のペースはおとなとは異なります。「どうしてできないの?」ではなく、「どのように感じ、考えているのか」を想像することで、関わり方は大きく変わります。

「得意と不得意のバランス」で見る

 発達が気になる子どもたちは、一部の認知領域で突出した力をもつことがよくあります。視覚的に情報を処理するのが得意で、図や映像を通じて理解する力が高い子もいれば、音やリズムから学ぶのが得意な子もいます。

 たとえば、ASD(自閉スペクトラム症)傾向のある子どもは、細部に注目する視覚処理の力が非常に高いことがあります。パズルやブロックなど、形の認識が求められる活動で集中力を発揮する一方で、言語的な指示や抽象的な表現には戸惑いやすい傾向があります。

 また、ADHD(注意欠如・多動症)傾向のある子どもは、変化や新しい刺激への反応が早く、発想が豊かな傾向にあります。一方で、単調な課題を持続的に続けることが苦手で、集中力が波のように上下します。これは「怠け」ではなく、脳の報酬系が新しい情報に強く反応するという生まれつきの特性といえます。

 このように、「できる/できない」で判断するのではなく、「どの領域の力を使うと理解しやすいか」「どのような提示方法が効果的か」を探ることが支援の出発点になります。

 得意な領域を足がかりに、苦手な領域を補うような関わりができると、子どもが安心して生活できるようになります。

 たとえば、言葉での説明が苦手な子には絵カードや写真で視覚的に示す、聴覚優位な子にはリズムや音で覚えられる方法を取り入れるなど、「その子の脳が理解しやすいルート」で支援することが鍵です。

イラスト:おおたきょうこ
イラスト:おおたきょうこ

【出典】『発達が気になる子の認知遊び』著:藤原里美

【著者情報】
藤原里美(ふじわら・さとみ)
一般社団法人チャイルドフッド・ラボ 代表理事/臨床発達心理士/保育士
公立保育園・東京都立梅ヶ丘病院・東京都立小児総合医療センター・明星大学非常勤講師を経て現職。
発達障害のある子どもの療育、家族支援を行うとともに、園の巡回や発達支援の研修など、支援者育成にも力を注ぐ。「子どもを変えずに、子どもの周りの世界を変える」支援方法により、現場や家庭で実現可能な実践方法を発信している。

【書誌情報】
『発達が気になる子の認知遊び』
著:藤原里美


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楽しい遊びを通して、子ども自身が困っていることの解決をめざす大人気シリーズ。

認知発達とは、見る・聞く・記憶する・覚える・考える・予測するなど、情報をキャッチし、物事を理解して考える力が育っていく過程を指します。

わたしたちは日常のなかで多くの情報を受け取り、その情報をあたまのなかで「整理して」、「次にどうするかを判断」しています。
認知発達はこの一連の過程を支える基盤であり、学習だけでなく、生活全般や人との関わり方に深く関係しています。

・遊びが続きにくい
・集団遊びに入りづらい
・指示が入りにくい
・切り替えが難しい
・ルールのある遊びが苦手 など発達が気になる子にとって、
認知発達を育む遊びは特に重要です。

本書で紹介する150個の「認知発達遊び」は、日常のなかで遊び、関わりながら、
その子のペースで認知の土台を育てていくためものです。
認知発達をつぎの7つの領域に分けて解説し、それぞれの領域を育てる具体的な遊びの提案をしています。
1知覚
2注意・処理
3記憶
4言語思考
5実行機能
6社会的認知
7メタ認知

診断の有無にかかわらず支援したいとき、「教える」より「育てる」関わりを大切にしたい場面などで、
それぞれの発達段階にあわせながら、無理なく取り入れられる遊びを紹介します。

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