テキーラだけじゃない! 古代の釣り針から現代のサーフボードまで、アガベと人類が歩んだ驚きの歴史

一般的に「アガベ」と聞くと、テキーラを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、実はアステカ文明をはじめとする古代メソアメリカの時代から、アガベは人々の生活に欠かせない極めて重要な植物でした。観賞用にとどまらない、意外と知られていないアガベの実用的な活用法と、人類との関わりの歴史を紹介します。

釣り針から衣類まで――古代メソアメリカ文明〜アステカ文明の暮らしを支えたアガベ

アガベは古くから、メキシコ周辺の人々にとって日々の暮らしや生存を支える重要な実用植物でした。痩せた土地でも栽培できるため、日本でいう蕎麦のような存在であり、トウモロコシが普及する以前にはメキシコにおいて非常に大切な作物でした。

葉から得られる繊維(サイザル麻)は、衣類やロープの材料として利用されてきました。また、アガベの凶悪なほど鋭いトゲは、そのまま針や「釣り針」として使われていたのです。

アガベは交易品としても重要な役割を担ってきました。遠く離れたアリゾナの遺跡からもアガベの繊維が発見されており、広域にわたる交易が行われていたことを示す証拠の一つと考えられています。こうした発見を通じて、アガベが古代社会において欠かせない存在であったことが、植物学の枠を超えて再評価されています。近年では、人類学や考古学の視点から研究される機会も増えています。

特権階級が愛した神聖な酒「プルケ」から、現代の「メスカル」ブームへ

お酒に関する文化も、アステカ文明などの古代社会から存在していました。開花直前の花序(花の集まり)を切り取り、そこに溜まった樹液を発酵させて造る「プルケ」というお酒は、当時は特権階級にのみ許された神聖な飲み物でした。

メキシコの農場に、見渡す限りの列をなして植えられたテキラーナ(A. tequilana)。

その後、ヨーロッパから蒸留技術が持ち込まれたことで、現代のアガベの実用面として最も有名な蒸留酒「テキーラ」や「メスカル」が誕生しました。近年では産地や原料のアガベの種類によって多様なスモーキーな味わいを持つ「メスカル」が、ニューヨークなどでも大きなブームになりつつあります。

メスカルについて、dog.keeper氏は「ウイスキーのアイラ島ピート(泥炭)香のような独特のスモーキーさがあり、エキゾチックな地酒として、近年欧米を中心に非常に注目されています」とその魅力を語ります。

また、健康志向の高まりとともに注目されているのが「アガベシロップ」です。「メイプルシロップよりも癖がなく、あっさりしていてホットケーキやコーヒーなどにも使いやすい」とShabomaniac!さんもおすすめです。

アガベの花茎で作るサーフボード!?

さらに現代ならではのユニークな活用法として、開花時に高く伸びる巨大な花茎の芯を繋ぎ合わせて、「サーフボード」の芯材にする試みも行われています。環境に配慮したオーガニックな素材として、職人の手によって作られるボードは芸術品のような美しさを持っています。

アガベの花茎を芯材に用いたサーフボード。環境負荷の低減を目指す先進的な挑戦だ。

ただの観賞用植物としてだけでなく、古代アステカの時代から人間の暮らしに密接に関わってきた歴史があるからこそ、アガベのカルチャーはこれほどまでに奥深いのです。その底知れぬポテンシャルには、驚かされるばかりです。

【書誌情報】
『AGAVES アガベ』
著者:ジェレミー・スパス、ジェフ・ムーア
日本語版監修:Shabomaniac!
日本語版翻訳:dog.keeper


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世界的な名著『AGAVES』待望の日本語完訳版。全980点の写真と最新の分類・栽培法、自生地や文化的背景まで徹底解説。初心者からコレクターまで、一生モノの「アガベのバイブル」となる決定版です。

【日本語版監修者紹介】
Shabomaniac!

園芸家。サボテンや多肉植物の育成・研究を行い、「Habitat Style」を提唱。育成記録や自生地の旅をSNSで発信し、『Agave Complete アガベ 原種・名品図鑑』はじめ、多数の植物関連書籍を執筆。
ブログ:http://shabomaniac.blog13.fc2.com
Instagram:@shabomaniac

【日本語版翻訳者紹介】
dog.keeper

植物愛好家で進化生物学の研究にも取り組む。アガベやシダ植物などの魅力を、科学的な視点からSNSや執筆を通じて伝えている。
ブログ:https://note.com/dog_keeper
Instagram:@dog.keeper/

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