上野の国立西洋美術館も構成資産!3大陸7カ国に広がるル・コルビュジエの世界遺産

ル・コルビュジエの建築作品:近代建築運動への顕著な貢献

大陸をまたぐ世界遺産!近代建築の礎がここに

 私たちが日々、目にしている建築物には、時代や国を越えて共有される「近代の設計思想」が随所に反映されています。ル・コルビュジエは、そうした近代建築の基礎となる重要な概念を世界に広めた建築家のひとりです。彼が1959年に完成させた東京・上野の国立西洋美術館は、「ル・コルビュジエの建築作品:近代建築運動への顕著な貢献」のひとつとして世界遺産に登録されています。

 この世界遺産の特徴は、日本を含む3大陸7カ国に点在する資産をひとつの資産群と捉え、国境だけでなく、大陸もまたぐ世界初の「トランス・コンチネンタル・サイト」であることです。世界遺産に登録されている17の構成資産は、近代建築の概念が世界規模で広がり、各地で実践されたことを証明するものとして評価されています。

 国立西洋美術館の魅力は、建築の考え方そのものが明快に示されている点にあります。1階を柱で持ち上げて余白を生むピロティ、空間に変化や広がりを与える高さの異なる天井、階段とは異なり視点の変化をゆっくり味わいながら移動できるスロープなど、合理性と機能性を追求した近代建築の思想が随所に読み取れます。国立西洋美術館は、近代建築の思想を見るだけでなく「体感できる」世界遺産といえます。

ル ・ コルビュジエってどんな人?

 ル・コルビュジエは雑誌に寄稿していた際のペンネームで、本名はシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ=グリ。1887年にスイスで生まれ、パリを拠点に活躍した20世紀を代表する建築家です。

 「近代建築の五原則」や、床スラブ・柱・階段を基本とする「ドミノ・システム」、身長183㎝を基準にした独自の尺度「モデュロール」など、重要な概念を次々に打ち出しました。

コンセプトは「無限成長美術館」

 国立西洋美術館には、ル・コルビュジエの「無限成長美術館」というアイデアが反映されています。これは収蔵作品が増えた際、建物そのものを外側へ付け足すように螺旋状に拡張していくことで、「無限に作品を収蔵できる」という構想です。

 実際には拡張は行われていませんが、中央ホールを起点に回遊しながら展示室を鑑賞できる動線が特徴的です。他にも1階のピロティなど、館内の随所にル・コルビュジエの建築思想を見ることができます。

その他の構成資産

フランス

ラ・ロッシュとジャンヌレ邸、シテ・フリュージェ、サヴォワ邸と庭師小屋、ポルト・モリトーの集合住宅、マルセイユのユニテ・ダビタシオン、サン・ディエの工場、ノートル・ダム・デュ・オ礼拝堂、サント・マリー・ドゥ・ラ・トゥーレット修道院、フィルミニ・ヴェールの身体と精神のレクリエーション・センター

スイス

レマン湖畔の小さな家、イムーブル・クラルテ

ドイツ

ヴァンセイホフ・ジードルングの住宅

ベルギー

ギエット邸

アルゼンチン

クルチェット邸

インド

チャンディガールのキャピトル・コンプレックス

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産』監修:宮澤 光

【監修者紹介】
宮澤 光(みやざわ・ひかる)
NPO法人世界遺産アカデミー主任研究員。北海道大学大学院博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。2008年より現職。跡見学園女子大学非常勤講師。世界遺産に関するさまざまな書籍の編集・執筆・監修を手掛けるほか、「チコちゃんに叱られる!」(NHK)などの多くのメディア出演や、全国各地で100本を超す講演・講座を実施している。著書に『13歳からの世界遺産』(マイナビ出版)、『世界遺産のひみつ』(イースト・プレス)など。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産』
監修:宮澤 光


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