アジアパラに臨む車いすバスケ日本代表に強力な援軍 ユニクロが公式スポンサー契約 元車いすテニス国枝さんが両者を結びつけ

アジア最大のパラスポーツの祭典「愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会」が10月18日に開幕する。金メダルを期待される競技の一つが車いすバスケットボール。前回2023年の杭州大会(中国)では、男子が金メダル、女子が銀メダルを獲得した。地元開催に臨む日本代表にユニホームを提供することになったのがユニクロだ。

9月30日、東京都内で日本車いすバスケットボール連盟(JWBF)とユニクロはパートナーシップ共同記者会見を開き、オフィシャルスポンサー契約の締結を発表した。会見には車いすテニス界のレジェンドである国枝慎吾さんも登場。実は国枝さんが、車いすバスケとユニクロを結びつけるきっかけだった。

車いすバスケットボール連盟 田中会長「勇気100倍」

アジア競技大会が閉幕し、次はいよいよアジアパラ競技大会を開幕を控える。45か国・地域が参加し18競技502種目が愛知県内各地の会場で見ることができる(※パラ自転車競技のみ静岡県)。

日本でパラスポーツにいちやく脚光が浴びるきっかけになったのが、2021年にあったパラリンピック東京大会だろう。中でもパラバスケは大きな話題となった。特に男子日本代表は、次々と強豪国を破って銀メダルを獲得。試合そのものが障害者スポーツというくくりを超えてエンターテインメント性があふれる内容で多くの視聴者を魅了した(※東京大会は全て無観客試合)。

あれから5年。再び日本で開催される大規模国際パラ競技大会を前に、ユニクロがJWBFをオフィシャルスポンサー契約をし日本代表ユニホームの提供を発表した。


会見にはJWBFの田中晃会長、ファーストリテイリング取締役でグループ上席執行役員の柳井康治氏、そしてJWBF理事でユニクロのグローバルブランドアンバサダーを務める国枝さん、日本代表の男子キャプテン・川原凜選手、女子キャプテン・萩野真世選手が登壇した。

田中会長は「ユニクロの力強い応援を得て勇気は100倍。必ずや良い結果をに繋げて期待に応えたい」と喜び、「単なるスポンサーシップではなく、我々の理念であるインクルーシブ社会の実現に向けた貢献を共有して頂ける」と契約の意義を強調した。


また、柳井氏も「服の力で世の中をより良くしていきたいなっていう我々の思いと、車いすバスケを通じて社会をより良くしていこうとされている連盟さんの考えが我々の志と共鳴するところがある」とあいさつした。

ユニクロと車いすバスケを結びつけた、車いすテニスのレジェンド

この両者を結びつけたのが、4大大会で何度も優勝し、パラリンピックでは4大会で金メダルを獲得している国枝さんだった。とはいえ、車いすテニスのレジェンドのイメージが強すぎる国枝さんがなぜ車いすバスケに関わっているのと不思議に思う人は多いのではないか。

実は国枝さん、車いすテニスに本格的に取り組む前に車いすバスケにも興味があったのだという。「(当時)自宅の近くにチームがなく、車いすバスケのチームに通うためには車で2時間かかった。それでテニスを選びました」と意外な経緯を明かした。

そこからの長年にわたる活躍ぶりは誰もがしるところ。2023年にプロ選手の引退後に、知人らと車いすバスケを再び始めた。それを知った田中会長から理事就任の打診を受けて就任。さらに2年間のアメリカでの車いすテニスのコーチから昨年帰国し、今年4月に仲間と車いすバスケのチームを立ち上げて週2回はプレーしているという。それくらい現在熱心に車いすバスケに関わっている。

そして、国枝さんがユニクロと車いすバスケを結びつけた。
国枝さんはユニクロのグローバルブランドアンバサダー「第1号」。長年に渡り、ユニクロと共にさまざまな活動をしている。

2009年に両者の関係が始まったころは、車いすテニスで国枝さんが大活躍していてもメディアで大きく扱われることが少なかった。柳井氏は「競技がスポーツとして発展していくのを一緒に支えてこられたことが非常にうれしい」と振り返り、「その一環の中で、いろんなパラスポーツと出会った」と話した。

また、選手たちの声も、ものづくりに生きていると話した。「車いすに座り続ける中で、服の裾がタイヤに当たってしまうのをどう回避するか。選手の要望に応えることは、お客様の声を大切にする我々の服作りのレベルを上げてくれる」(柳井氏)。

そして、国枝さんがJWBFの理事に就任したのを機に、ユニクロへの橋渡しを申し出て、ユニクロと車いすバスケが結びついた。柳井氏はきっかけが国枝さんだったことを明かし、田中会長は「大変ご尽力をいただいた」と国枝さんに感謝を述べた。

ユニクロのパラスポーツ支援

そもそもユニクロはスポーツにおいて、多くの競技でさまざな形で支援を行っている。パラスポーツへの支援もパラアスリートの国枝さんらを通じて行ってきた。会見の中で柳井氏は、車いすテニスの世界ツアーのスポンサーを務め、国枝さんやゴードン・リード選手(イギリス)が参加するジュニアクリニックも開催してきたことを紹介した。

2024年のオリンピック・パラリンピックパリ大会ではスウェーデンのチームにウエアを提供したほか、香港のパラスポーツチームも支援している。日本国内でも、ゴルフやテニスの日本代表チームにウエアを提供している。代表チームとの関わりは「どんどん積極的にやっていっている分野」(柳井氏)で、そこに車いすバスケが加わった。

柳井氏は、車いすバスケ日本代表だけでなくアンダー23代表にもウエアを提供することをを発表し「非常にうれしい」と喜んだ。今後は試合以外でも、選手と一緒に取り組めるイベントや企画を考えているとした。

まるで現役アスリート 国枝さんが両キャプテンに熱心に質問

会見のトークセッションでは、国枝さんと日本代表の男子キャプテンの川原選手、女子キャプテンの荻野選手が、競技の魅力やアジアパラ競技大会への意気込みを語った。

川原選手は「(男子日本代表は)スキルもメンタリティーも徐々に上がっているが、最後に勝ち切るところは、まだそのステージに入るか入らないかというところ。アジアではしっかり優勝して、勝ち切るステージに入っていきたい」と話し、女子の萩野選手は「コートの5人だけでなく、ベンチの7人を含めた12人全員で、チームの雰囲気をつくって盛り上げるところが魅力」とチームの見どころを紹介した。

国枝さんが本当に車いすバスケが大好きなんだなと思わさせられる場面も。国枝さんが両キャプテンに質問をする中で、ウォームアップにテニスボールを使うことについて川原選手に尋ねると「ボール3つほどでジャグリングをしたり、ドリブルをつきながら対面でキャッチボールをしたりして、コーディネーション能力を高めている」と説明すれば、国枝さんは「左右で違う動きをするのがめちゃくちゃ難しい。やってみたい」とさっそく意欲を見せた。

さらには荻野選手に「ゴール下に飛び込むのが怖くてたまらない。選手たちに怖さはない?」と質問し、萩野選手から「最初の頃は怖くて行けなかったが、慣れたら全然。ゴールを見ているので、相手はあまり見ていないかもしれない」と返答されると、国枝さんは「僕も慣れるように頑張ります」と現役アスリートなのかと思うようなモチベーションの高さだった。

地元で迎える正念場

日本の車いすバスケは近年、浮き沈みを経験してきた。男子は2021年の東京パラリンピックで銀メダルに輝いたが、2024年のパリ大会は、アジア・オセアニア選手権の準決勝でイランに敗れて出場を逃した。女子はパリに4大会ぶりに出場したが、グループリーグは3戦全敗で、最終順位は7位だった。

巻き返しの途上にある。9月にカナダ・オタワで開かれた世界選手権では、男子が6位、女子が8位。

国枝さんは、2021年の東京パラリンピックで男子が銀メダルを獲得したことは記憶に新しいとしたうえで、世界選手権での戦いぶりを見ていて、日本代表のチーム力に手応えを感じたという。「世界のトップ集団に食らいつき、チャンスもあると見せてくれた。ユニクロのユニホームをまとって世界で躍動する姿を楽しみにしています」と日本代表にエールを送った。

アジアパラ競技大会でのパラバスケは開幕より一足早く10月16日より試合が行われる。試合会場は愛知国際アリーナ(IGアリーナ)という国内屈指の会場。日本開催での飛躍が楽しみだ。

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