スランプの大女優を救ったのは「前代未聞のデート」!? 天才料理人・味沢匠が仕掛けた「極上タンシチュー」の魔法【ザ・シェフ】

昭和から平成にかけて多くの読者を魅了し、テレビドラマ化もされた伝説の料理劇画『ザ・シェフ』(原作:剣名舞、劇画:加藤唯史)。

法外な報酬と引き換えに、依頼人の期待を超える一皿を作り上げる天才シェフ・味沢匠(あじさわ たくみ)の活躍を描く本作には、今なお色褪せない人間ドラマが詰まっています 。

スランプに喘ぐ国民的女優・蒲レイ子と「死んだ表情」のCM撮影

第21話「真剣勝負①」で味沢が対峙するのは、かつて主演映画で一世を風靡したものの、最近は「スランプ」と囁かれパッとしない国民的女優・蒲レイ子(かば れいこ)です。

彼女が出演する新発売のビーフシチューCM(コマーシャルフィルム)の撮影現場は、重苦しい空気に包まれていました。

彼女の演技や表情に「おいしさ」が少しも感じられないと、社運をかけるスポンサー企業の社長がへそを曲げてしまったのです。

「あの表情ではわが社の製品は売れん」 「なによりあの箸の持ち方!社員食堂の飯屋に毛の生えたようなものだ」

イライラを募らせるレイ子と、板挟みになるプロデューサーたち。

CM制作は完全に暗礁に乗り上げていました。

報酬は「大女優とのデート」!? 味沢匠が提示した不敵な条件

そこで白羽の矢が立ったのが、裏社会でも「腕は超一流」と噂される契約料理人・味沢匠でした。 プロデューサーから「彼女に本当にうまいビーフシチューを食べさせて、最高の表情を引き出してほしい」と依頼された味沢。

しかし、味沢は「私が作った料理を、お宅の新製品(レトルト)だとして視聴者を騙すやり方は、好きになれません」と、CM業界の“フェイク”をバッサリと切り捨てます。

代用の麦茶や水で行われるCMの演出論を説くスポンサーに対し、味沢は不敵な笑みを浮かべ、報酬とは別に「ある条件」を提示しました。

 「以前から大物女優とデートしたいと思っていたので、一度でいいからデートをさせてほしい」

プライドの高い大女優を相手にした、あまりにも無礼で前代未聞の要求。

しかし、味沢は「彼女に本当にうまいビーフシチューを食べさせられるなら、なんとかなるんじゃないでしょうか」と言い放つのです。

モーテルの向かいにあった「意外な場所」と、心ほどける牛舌シチュー

ロケの合間、しぶしぶ味沢の助手席に乗った蒲レイ子は、不機嫌そのものでした。

「なんで私がこんな料理人とデートしなきゃいけないのよ」

車が向かった先は、なんとネオンが怪しく光るモーテル街。

レイ子が「じょ、冗談じゃないわよ、モーテルなんか……」と身構えたその時、味沢が彼女を連れて入ったのは、その向かいにひっそりと佇む小さな洋食店でした。

店内に一歩足を踏み入れると、そこには窓から美しい夜景が一面に広がる特等席が待っていました。「わあっ、素敵!!」と思わず声を上げるレイ子。

そこで味沢が彼女に差し出したのは、その店の看板メニューである「牛舌(タン)シチュー」でした。

一口食べたレイ子は、その深い味わいに驚きつつも、「この程度の味で私を満足させられると思ったら大間違いよ」と強がります。

しかし、美味しい料理と美しい景色、そして何より張り詰めた日常から解放された空間が、彼女の頑なな心を自然と解きほぐしていきました。

「アハハ、本当に久しぶりに楽しかった。最近ずーっとイライラしていたから……」

満面の笑みを取り戻したレイ子に、味沢は静かに問いかけます。

「じゃあ、比べるのに、このビーフシチューと(CMの新製品と)どっちのほうが美味しいですか?」

料理の美味しさだけでなく、食べる人の「環境」や「心の状態」までをデザインし、最高の笑顔を引き出してみせた味沢匠。

これぞまさに、彼が仕掛けた「真剣勝負」だったのです。

<第1話:幻の料理人①>を読むにはこちらから
https://love-spo.com/article/the-chef_001

『ザ・シェフ』次回へ続く!

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【書籍情報】
『ザ・シェフ』
原作:剣名舞
劇画:加藤唯史

法外な報酬を要求するが、依頼人の希望に応じて料理を作り上げる天才シェフ・味沢匠(あじさわ・たくみ)の活躍を描いた料理劇画。石油産出国であるパミール王国でその全権を握る大臣は、外務省関係者がもてなす帝都ホテルの晩餐をほとんど食べ残して帰る。そこで「幻の料理人」と呼ばれる天才シェフ・味沢匠が、大臣を満足させる晩餐を作るように依頼されるが、味沢はその報酬として500万円を提示して……!?

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