助っ人外国人列伝/バファローズ編

日本球界を彩ってきた助っ人外国人選手たち。「ラブすぽ」が独自に選んだ名選手10名を紹介する。

ドン・マネーの後釜として途中入団で三冠王・落合博満に次ぐ成績を残した！リチャード・デービス

【番外編】リチャード・デービス

〈NPB通算データベース〉
・打率 .331
・本塁打 117本
・打点 322打点

大物メジャーの後釜として途中入団

日本在籍5年で打率.331、117本塁打、322打点。数字で判断すると歴代ベスト10に入るべき助っ人外国人かもしれない。だが、野球以外の部分で注目を浴びてしまったのがリチャード・デービスだ。

1953年、カリフォルニア州に生まれたデービスは大学で野球に励み、1972年にブルワーズと契約する。5年後にメジャー昇格を果たし、1979年には12本塁打を放つもレギュラー定着とはいかず、フィリーズやブルージェイズなどの球団を転々としていた。

デービスに転機が訪れたのは1984年。日本では近鉄が獲得したメジャーの大物であるドン・マネーが5月に突然帰国してしまう。近鉄が提供した環境にマネーが耐えられなかったのが理由である。

1980年代までは、「人気のセ、実力のパ」と言われており、パ・リーグ球団はファンが少なく、近鉄は資金が潤沢な球団ではなかった。

そのためホームの藤井寺球場は老朽化したままでロッカーやトイレがボロボロ、宿舎のマンションは冷暖房が壊れ、ゴキブリが這いずり回る有り様だったという。メジャーで成功を収めたスターに、近鉄の環境は不釣り合いだったのだろう。

マネーの後を追うようにもう一人の助っ人外国人のリチャード・デュランも退団してしまい、その後釜として緊急入団したのがデービスだったのだ。

陽気なキャラと腕っ節で猛牛打線の兄貴分

189センチ、90キロの筋肉質、俳優のエディ・マーフィ似で性格も陽気なデービスは、移動中の新幹線でアルコールを買い占めて同僚にふるまうなど、兄貴分的な存在としてチームに溶け込み、何よりも日本野球の水が合ったようだ。

二人の助っ人外国人が抜けた穴を払拭するパワフルな打撃を披露し、78試合ながら打率.310、18本塁打、45打点の成績を残し、期待以上の活躍で首脳陣を喜ばせた。

1985年のシーズンは、ほぼフル出場して打率.343、40本塁打、109打点を記録して猛牛打線を引っ張り、昨年の結果がフロックでないことを証明する。

なお、この年はロッテの落合博満が三冠王に輝いているが、デービスの打撃成績は肉薄する数字であり、落合がパ・リーグにいなければ、デービスの三冠王もあり得たのである。

翌1986年も近鉄の主砲として昨年同等の高パフォーマンスを見せたデービスだったが、この時期のパ・リーグには阪急のブーマー・ウェルズ、ロッテのレロン・リー、西武のスティーブ・オンティベロスなど、名だたる助っ人外国人たちがいた。

そのためデービスがいくら結果を残しても、外人枠の関係でオールスターに出場することはなく、ペナントでも近鉄の試合はほとんどテレビ放送されないことで注目度が低かった。

そんなデービスが一躍有名となったのが、たまたまテレビ中継がされた1986年6月の西武戦だ。

数々の事件で「不良外国人助っ人」の代表格に

その複線はあった。この日の試合は、西武先発の東尾修から近鉄の鈴木貴久がホームランを打つと、次の打席でビーンボールを投げられてしまう。

東尾修がコントロールが良い投手あることは広く知られており、チームの兄貴分のデービスは怒り心頭。すでに臨戦態勢だったという。

緊迫した雰囲気で試合が進み、西武が1点リードの6回、事もあろうに東尾はデービスに厳しい内角攻めを繰り返し、遂にはデットボール。デービスは一直線にマウンドに駆け寄ると、東尾の顔に嵐のようなパンチを見舞い、両軍入り乱れての大乱闘に発展した。

こうした場面が白昼のテレビ中継で流れたことで、デービスは野球の実力より「危険人物」として認知されてしまう。

そして1988年6月、デービスが本当の「危険人物」となり、野球人生が暗転する事件が起こった。警視庁が捜査していた別件の大麻事件でデービスが関係していることが判明し、大麻取締法違反で現行犯逮捕されてしまったのだ。

現役選手が逮捕されるという不祥事を球団は重く受け止め、デービスをすぐに解雇している。本人は釈放後のNPB復帰を希望していたが、アメリカに強制送還されて自らの野球人生を閉じた。