プロ野球妄想年俸

本サイトや雑誌「がっつり！プロ野球」（日本文芸社）でも好評を博した『球界のレジェンド、今なら年俸はいくら？』。昭和のレジェンド選手が、もし令和の現代プロ野球界でプレーしていたら、一体年俸はいかほどか――。そんな“妄想”だけで綴る当企画。今回は「ミスタータイガース」こと掛布雅之の「妄想年俸企画」第4回にして最終回！前回、（現在であれば）FAを取得するプロ8年目を終え、妄想年俸上は7年56億円という巨額契約を結んだ掛布雅之……。果たしてその後の野球人生はどうなる？

「ミスタータイガース」掛布雅之の妄想年俸総額は、76億6200万円！

⚫︎掛布雅之/阪神タイガース

妄想年俸上とはいえ、年俸8億円×7年契約という超巨額契約を結んだ掛布雅之。しかし、史実ではこの年俸に“ふさわしい”と言っていい数字を以降も残し続ける。まず、特筆すべきは「フル出場」だ。1980年のケガを機に、身体のケアの重要性を再認識した掛布雅之は翌年から5年連続でシーズンフル出場をマークしている。チームの顔として試合に出続ける……これだけでも球団にとっては大きなプラス要素だ。加えて、1982年から4年連続でシーズン30本塁打以上を記録。ちなみに阪神では掛布雅之以来、「生え抜き選手によるシーズン30本塁打以上」は一度も生まれていない。当時はラッキーゾーンがあったとはいえ、左打者によるこの数字はやはり規格外だ。

プロとしてのキャリアも後半に差し掛かり、より一層「長距離打者」としての実力を発揮しはじめた掛布雅之だが、そのハイライトはやはり1985年だろう。今も語り草になっている、球団史上初の日本一。この年、掛布雅之は3番バース、5番岡田とともに史上最強のクリーンアップトリオを形成。改めて書くまでもないかもしれないが、この3人のシーズン打撃成績を改めて紹介しよう。

３番バース打率.350、54本塁打、134打点
4番掛布雅之　　　　　　打率.300、40本塁打、108打点
5番岡田彰布　　　　　　打率.342、35本塁打、101打点

クリーンアップ3人が揃って打率3割、30本塁打、100打点をクリアするという空前絶後の記録を叩き出している。ちなみに主に1番を打った真弓明信もこの年、打率.322、34本塁打、84打点というクリーンアップ級の成績をマーク。チーム本塁打219は当時のNPB記録でもあり、この超重量打線を武器に阪神は球団史上初めてとなる日本一に輝いた。

さて、ここから話を妄想年俸に戻そう。妄想上では1982年から7年契約を結んでいる掛布雅之だが、近年のプロ野球界ではメジャーではすでに当たり前となったオプトアウト（契約破棄条項）が徐々に浸透してきている。記憶に新しいのが中田翔（巨人を退団）で、今オフ、3年契約の途中ながら自らオプトアウトを選択し、他球団への移籍を目指している（11月17日時点）。

ただし、オプトアウトの本来の目的は、他球団への移籍ではなく、契約条件のさらなる上積みだ。仮に、掛布雅之が7年契約途中でのオプトアウトを契約に盛り込んでいたとしよう。球団が日本一に輝き、自身もキャリア2度目のシーズン40本塁打をマークした1985年オフは、まさに契約見直しに最適なタイミングだ。

年齢的にもまだ30歳と、働き盛り。当然、年俸8億円からのさらなるアップを勝ち取れるはずだ。阪神が掛布雅之を残留させるために積む金額を現在の相場と照らし合わせて考えると、残り3年間の契約は維持しつつ、ベースの年俸を9億円に上げる、というのが落としどころではないだろうか。

NPBではここにきて、年俸バブルが起き始めている。今オフ、ソフトバンクがオスナに対して4年40億円を提示したと報じられているが、メジャー級とは言えなくとも、それに近づく契約を提示する球団が生まれているのは事実だ。そのため、掛布雅之の妄想年俸9億円も、決して夢物語ではない。

7年契約のうち4年を消化し、オプトアウトで残り3年の契約を結び直す――。現実でも「ありえそう」な展開ではないだろうか。

というわけで、掛布雅之の1986年からの年俸は妄想上で9億円に！

しかし、ここからがまさかの展開。1986年以降、掛布雅之は度重なる故障に悩まされることになる。同年4月には手首に四球を受けて骨折。5月には守備中のアクシデントで右肩を負傷。翌1987年は腰痛と、30歳を機にかつての打棒は失われてしまう。

そして1988年9月14日。33歳の若さで、同シーズン限りでの現役引退を表明。日本一の栄光からわずか3年後の出来事だった。在籍15年間での通算349本塁打は今も破られていない球団記録。「ミスタータイガース」の妄想年俸総額は、76億6200万円！

ファン心理的には、もっと続けていれば……という悔しさはどうしても残るだろうが、多くのタイガースファンに鮮烈なインパクトを残したのは間違いない。