キューバの野球人。十人十色の生き様【二宮清純 スポーツの嵐】

マルティネスは3度のセーブ王

  現在、NPBに籍を置くキューバ人選手は8人いる。

 リバン・モイネロ、ダリオ・サルディ、ジョナサン・モレノ(ホークス)、アリエル・マルティネス(ファイターズ)、ライデル・マルティネス(ジャイアンツ)、ランディ・マルティネス、クリスチャン・ロドリゲス(ドラゴンズ)、ダヤン・ビシエド(ベイスターズ)。

 代表格はホークスのモイネロとジャイアンツのマルティネスの2人だ。

 左腕のモイネロは昨季のパ・リーグMVP。先発に転向後の成績は、2024年=11勝5敗、防御率1・88。25年=12勝3敗、防御率1・46。WBCにもキューバ代表として17年、23年、26年と3大会連続で出場している。

 巨人のクローザー、マルティネスは、中日時代も含め3度のセーブ王に輝いている、身長193センチの長身右腕。NPBを代表する守護神だ。

 2人とも高給取りだ。モイネロは24年に4年40億円の大型契約を結んだ。マルティネスも巨人と4年50億円超の契約をかわした。

 だがキューバは社会主義国で、国家が日本の球団に選手を派遣するかたちを採っているため、実際に選手が手にする報酬は2割から3割程度といわれている。大部分は国庫に入る。米国の経済制裁により困窮するキューバにとって、野球選手の派遣は、貴重な外貨獲得の手段というわけだ。

 キューバからは多くの有力選手が米国に亡命している。

 代表的なところでは、MLB史上最速となる105・8マイル(約170キロ)を、レッズ時代の10年9月に記録した左腕アロルディス・チャップマン。現在はレッドソックスのクローザーとして活躍している。

 チャップマンは09年7月、国際大会に出場するためオランダに遠征。監視の目をかいくぐって、欧州の小国アンドラを経由して米国へと渡った。

 現在の年俸は約20億円(1330万ドル)。危険を冒して手に入れた対価である。

 危うく命を落としかけた選手もいる。ドジャースなどで強肩強打の外野手として活躍したヤシエル・プイグは、メキシコを経由して米国に渡る際、ブローカーが要求した手数料を用意できず「手足を切り落として野球のできない体にしてやる」と脅された。

 ドジャース時代には違法賭博に手を出し、借金返済を迫る“その筋”の人たちから追いかけられたこともある。

 今年2月、プイグは違法賭博組織の捜査に関連して虚偽の供述を行なったとして、米連邦検察当局により「有罪評決」を受けた。キューバ脱出組の人生も十人十色である。

初出=週刊漫画ゴラク4月17日発売号

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