独自すぎる世界観は没入しにくい?世界観を描くうえで“判断軸”を定めておくべき理由【賞を勝ち獲る小説の書き方】

書く前にやっておきたい編集目線の下準備

物語を書きはじめる前に、用意しておきたいことがあります。「どの賞を狙うか?」「その賞の読者は?」執筆に入る前に、スケジュールまで設計していくことが大切です。


世界観のスケールを決める

舞台・時代・現実度を最初に決めておくことで物語は安定します。何が可能で、どこまで創作を許容する世界か――その基準が明確であれば矛盾が起きません。

要点

  • リアル度合を決めると矛盾が激減する
  • 世界観の深度が語り口の密度も左右する
  • 「可能/不可能」の線引きが作品の芯になる

【編集者】作品の舞台に合わせて世界観は明確に設定する

 世界観の“現実度”が曖昧なまま書きはじめてしまうと、破綻が起きやすくなります。時代背景や技術レベル、文化、社会構造といった基盤が定まっていないと、描写も曖昧になり、読者も作品世界を把握できません。

 重要なのは、「何が可能で、何が不可能なのか」という線引きをすることです。魔法が使えるなら代償は何か、科学技術がどこまで発達しているか、政治や倫理は現代に近いのか独自体系か――この“判断軸”を最初に定めるだけで、描写の迷いが大幅に減ります。キャラクターの価値観や選択にも、一貫性と説得力が生まれるのです。

 世界観のスケールは、語り口とテンポも左右します。現代劇なら説明は最小限で済み、歴史や異世界など厚みの必要な舞台では情報の密度が増します。世界をどの深度で描くかをあらかじめ決め、物語の読み味そのものを設計しましょう。

【作家】独自すぎる世界観は共感性を損なうため要注意

 物語創作は基本的にフィクションです。だからといって自由奔放に世界観を設定することは原則NG。生活の基礎となる衣食住をはじめ、重力や酸素など、一定の現実ルールに則って物語の舞台を描き、読者の没入感を損なわれないように留意すべきでしょう

 というのも、読者の大半(賞の審査員を含む)は奇抜な世界観よりも、登場するキャラたちに感情移入できるドキドキハラハラの展開を求めます。そこには試練や苦難が立ちはだかり、奮闘や友情によって乗り越えるという王道ラインが必須。この部分に物語性の比重を置かなければ、賞を勝ち獲る感動的な小説にはなり得ません。

 もちろん独自のユニークな世界観が作品のオリジナリティになる場合もありますが、特殊な世界を破綻なく描き切るには高度な筆力とバランス感覚が求められます。プロデビューしてから取り組んでも遅くありません。

奇抜な世界観よりもまずは身近な人間ドラマを描こう

【出典】『プロの編集者&小説家が教える クリエイターのための賞を勝ち獲る小説の書き方』著:秀島迅/監修:Nola編集部/イラスト:真崎なこ

【著者紹介】
秀島迅
青山学院大学経済学部卒。2015年、応募総数日本一の電撃小説大賞(KADOKAWA)から選出され、『さよなら、君のいない海』で単行本デビュー。小説家として文芸誌に執筆活動をしながら、芸能人や著名人のインタビュー、著述書、自伝などの執筆も行なっている。近著に長編青春小説『その一秒先を信じて シロの篇/アカの篇』二作同時発売(講談社)、語彙力図鑑シリーズなど著書多数。また、コピーライターや映像作家としての顔も持ち、企業CM制作を現在も月10本以上手がけている。

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【書誌情報】
『プロの編集者&小説家が教える クリエイターのための賞を勝ち獲る小説の書き方』
著:秀島迅/監修:Nola編集部/イラスト:真崎なこ


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