「子どもは変えずに大人が変わる」発達が気になる子の行動が落ち着く認知遊びの視点

\認知遊びの目的/
困った行動を認知の視点から見直す
おとなから見ると「困った行動」に見えることも、認知の仕組みから見ると“そうならざるを得ない理由”が隠れています。
たとえば「すぐ立ち歩くのは注意が続きにくいから」「片づけられないのは手順がイメージしにくいから」「友だちを叩いてしまうのは気持ちを言葉で伝えられないから」――。
そう考えると、「この子を変えなくては」ではなく、「この子がわかりやすいようにおとなの伝え方を変えよう」「遊び方を工夫しよう」という発想になります。
認知遊びとは、まさにこの“発想の切り替え”を実践に落とし込むものです。その子の認知発達にあった遊びを提供し、遊び方を調整すると、行動が自然と落ち着くことが多いのはそのためです。「どうしたらこの子は遊びやすく、生活しやすくなるかな?」と考える姿勢が、遊びの効果を大きく高めます。
「教える」と「待つ」のバランス
発達を支えたい気持ちが強くなると、おとなはつい教え込みすぎてしまうことがあります。
でも、子どもが成長していくプロセスは本来、とてもゆっくりで、自分のタイミングで「わかる」にたどり着くものです。
2〜3回のヒントにより自力で動ける課題を、その子に合った“ちょうどよい段階”とするという考え方は、子どものペースを大切にするうえでとても役立ちます。これがその子の発達で「芽生えているところ」を支える視点です。
何度伝えても難しいときは、やり方を変えたり、もう少し基礎の遊びに戻ったり、おとな側が調整すればよいのです。「教える」よりも、「気づけるように見守る」「うまくいく環境を整える」ことを増やすと、子どもは驚くほど伸びます。
急がず、焦らず、その子の歩幅で育ちを待つことが、遊びを通した発達支援の大切な視点です。

ひとり遊びと集団遊びのバランス
ひとり遊びが続く子を見ると、「友だちと遊べていない」と心配されることがあります。
しかし、ひとり遊びの時間は、認知発達の宝庫です。
自分のペースで考え、試し、やり方を変え、また試して……というループは、実行機能・計画性・集中力などをじっくり育てます。何より安心と情緒の安定を保障します。
一方、集団遊びやごっこ遊びでは、社会的理解ややりとりの力が育ちます。どちらがよいわるいではなく、その子にとっての心地よい比率を見極めることが大切です。
無理に集団に押し込む必要はありません。ひとり遊びが充実してくると、自然と他の子との関わりも広がりやすくなります。
子どもの「伸びるタイミング」は子ども自身が知っています。そのサインを見逃さず、遊びの選択肢を柔軟に用意しておくことが、ちょうどよいバランスを生みます。
環境の工夫と認知遊び
注意がそれやすい、刺激に敏感、手順がつかみにくい……こうした特性は、子ども自身の努力とは関係なく現れることがあります。だからこそ、遊びを「うまくいきやすくする」には、環境の工夫が欠かせません。
たとえば、遊びのコーナーをわける、おもちゃの種類を絞る、片づけ場所を見える化する、静かなスペースを用意することなどです。こうした小さな調整が、子どもの「入りやすさ」をぐっと高めます。
環境を整えると、同じ遊びでも子どもの集中度や意欲が大きく変わります。子どもを変えるのではなく、環境を子どもに合わせて整えるというやわらかな視点が、発達を支える遊びをより効果的にします。


【出典】『発達が気になる子の認知遊び』著:藤原里美
【著者情報】
藤原里美(ふじわら・さとみ)
一般社団法人チャイルドフッド・ラボ 代表理事/臨床発達心理士/保育士
公立保育園・東京都立梅ヶ丘病院・東京都立小児総合医療センター・明星大学非常勤講師を経て現職。
発達障害のある子どもの療育、家族支援を行うとともに、園の巡回や発達支援の研修など、支援者育成にも力を注ぐ。「子どもを変えずに、子どもの周りの世界を変える」支援方法により、現場や家庭で実現可能な実践方法を発信している。
【書誌情報】
『発達が気になる子の認知遊び』
著:藤原里美
発達が気になる子といっしょに!
楽しい遊びを通して、子ども自身が困っていることの解決をめざす大人気シリーズ。
認知発達とは、見る・聞く・記憶する・覚える・考える・予測するなど、情報をキャッチし、物事を理解して考える力が育っていく過程を指します。
わたしたちは日常のなかで多くの情報を受け取り、その情報をあたまのなかで「整理して」、「次にどうするかを判断」しています。
認知発達はこの一連の過程を支える基盤であり、学習だけでなく、生活全般や人との関わり方に深く関係しています。
・遊びが続きにくい
・集団遊びに入りづらい
・指示が入りにくい
・切り替えが難しい
・ルールのある遊びが苦手 など発達が気になる子にとって、
認知発達を育む遊びは特に重要です。
本書で紹介する150個の「認知発達遊び」は、日常のなかで遊び、関わりながら、
その子のペースで認知の土台を育てていくためものです。
認知発達をつぎの7つの領域に分けて解説し、それぞれの領域を育てる具体的な遊びの提案をしています。
1知覚
2注意・処理
3記憶
4言語思考
5実行機能
6社会的認知
7メタ認知
診断の有無にかかわらず支援したいとき、「教える」より「育てる」関わりを大切にしたい場面などで、
それぞれの発達段階にあわせながら、無理なく取り入れられる遊びを紹介します。
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