現代人の本当の姿を浮き彫りにする? ネット社会や消費文化までを網羅する現在の民俗学の定義とは【眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話】

民俗学の研究対象は「みんな」

現代的な課題に取り組む学問

柳田國男は、民俗学の研究対象を「常民」と位置づけました。柳田のいう常民とは、武士や貴族といった支配層ではなく、農業や漁業に従事し、古くからの慣習や伝統を無意識のうちに継承してきた人びとを指します。

柳田は、著書『郷土生活の研究法』において、「常民即ち極く普通の百姓」であり、「住民の大部分を占めてゐた」存在だとしています。この定義に即すと、江戸時代の村落内における中間層の本百姓(土地持ちの百姓)にあたる人びとを想定していたと考えられます。しかし、この「常民」の定義に対しては、長年、漂泊民や被差別民、都市住民、アイヌの人びと、在日外国人などが排除されているという批判がなされてきました。

そのため現在では、特定の階層を指す「常民」よりも、社会に生きる多様な人びと、つまり「みんな」が、民俗学の研究対象であるという捉え方が一般的です。

かつての民俗学では、どちらかというと「失われゆく古い伝承」の研究に重きが置かれていましたが、現代民俗学の研究対象は劇的に広がっています。

現在の民俗学は、過去の遺物を研究する学問ではなく、「現代を生きる私たち全員(みんな)」の慣習や価値観を分析する、現代的な課題に取り組む学問へと進化しています。

「常民」から「みんな」へ

\ 柳田國男が位置づけた「常民」/
【主に稲作に従事する定住農民】
文字記録に残らない一般の人びとの慣習、行事、信仰などを記録することで、日本人の固有信仰や生活史などを明らかにしようとした。

\ 現在の民俗学の研究対象 /
【すべての現代人(みんな)】

現代人が送っている「日常生活」そのものが研究対象であり、ネット社会や消費文化などの現代カルチャーもその対象に含まれる。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話』監修:島村恭則

【監修者紹介】
島村恭則(しまむら・たかのり)
民俗学者。関西学院大学社会学部長・教授。1967(昭和42)年、東京都生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得退学。文学博士(筑波大学)。国立歴史民俗博物館教官、韓国・翰林大学校客員教授、東京大学客員教授などを歴任。日本各地で民俗学調査を行うとともに、韓国・中国での調査・研究も行う。
近年は、世界民俗学史をふまえた民俗学理論の研究、とくに民俗学を国際的・学際的な「ヴァナキュラー文化研究」として再編成する議論を展開している。
著書に『みんなの民俗学 ヴァナキュラーってなんだ?』(平凡社)、『民俗学を生きる ヴァナキュラー研究への道』(晃洋書房)、『これからの時代を生き抜くための民俗学入門』(辰巳出版)、『昔話の民俗学入門 民間伝承の秘密を読み解く』(創元社)、編著に『現代民俗学入門 身近な風習の秘密を解き明かす』(創元社)などがある。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話』
監修:島村恭則


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現代の社会を知る上でも重要な学問ともいわれる「民俗学」。
そもそも「民俗学」とは「民」(=人々)について「俗」(=ヴァナキュラー)の視点で研究する学問であり、日本においては、春夏秋冬の年中行事や風習から、身近な衣食住の伝統や習慣など、都市や地方のあらゆる「文化・もの」について、歴史や謂われ、理由などが存在する。
本書では、現代にも繋がる礼儀やしきたりや祭祀、文化や風習、民間伝承、芸能、文化遺産から、昔話、怪談、(都市)伝説、B級グルメ、ネットミーム、パワースポット、七不思議伝と言われるものまで幅広く取り上げ、「現代民俗学」としてあらゆるジャンルについてわかりやすく紹介、解説する。

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