神武天皇は広島に立ち寄っていた?今も残る伝説とゆかりの地【図解 広島の話】

知れば知るほど面白い広島の歴史

広島に残る初代神武天皇の足跡

古くから海上交通の要衝だった広島

 『古事記』『日本書紀』において初代天皇とされる神武天皇は、日向国(現・宮崎県)から大和国(現・奈良県)へ東征し、橿原で即位して統一王朝を築いたとされています。この東征の過程で、神武天皇は安芸国(現・広島県西部)に立ち寄ったとの伝承があります。

 『古事記』には「多祁理宮」に7年、『日本書紀』には「埃宮」に2カ月半ほど滞在したとあり、この多祁理宮と埃宮は、ともに安芸郡府中町の多家神社だと考えられています。多家神社の境内とその周辺には、神武天皇が腰掛けて休んだと伝わる「神武天皇御腰掛岩」、神武天皇が水を汲んだと伝わる「水分峡」など、神武天皇に関連する名所が点在しています。

 府中町以外にも、広島県内には神武天皇にまつわる地名や伝説が多く残っており、広島市には、神武天皇が烽火をあげたと伝わる「火山」や、船を繋いだとされる「船山」、天皇の船を待ったことに由来する「帆待川(帆巻川)」などの地名があります。また、廿日市市にある「地御前」や「串戸」といった地名も、神武天皇の着船や儀式に由来するものとされています。

 これらの伝承を史実とする確たる証拠はありませんが、広島は古くから瀬戸内海航路の要衝であり、重要な寄港地であったことが、多くの神武伝承が残る背景にあると考えられています。

神武天皇の東征の足跡

  • 橿原(奈良県橿原市)
  • 熊野(三重県熊野市?)
  • 難波(大阪府大阪市)
  • 高島宮(岡山県笠岡市または岡山市?)
  • 埃宮/多祁理宮(広島県府中町)
  • 岡田宮(福岡県北九州市)
  • 宇佐(大分県宇佐市)
  • 高千穂(宮崎県高千穂町)
  • 美々津(宮崎県日向市)

神武天皇ゆかりの神社

【府中町の多家神社】
神武天皇が東征の際に立ち寄った埃宮(多祁理宮)だったと伝わります。平安時代後期以降、戦乱によりもともとの社地がわからなくなっていましたが、明治6年(1873)に多家神社の系譜を継ぐとされる松崎八幡宮と総社を統合し、現在地に復興されました。

【多家神社の拝殿】
主祭神として神武天皇と安芸津彦命を祀る。安芸津彦命は安芸国の開祖神で、神武天皇が安芸に立ち寄った際に出迎え、東征を支援したと伝わる。

【多家神社境内の「たれその森」】
神武天皇がこの地の者に「曽は誰そ」と尋ねたことから、この名がついたという。


【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 広島の話』監修:佐々木卓也

【監修者情報】
佐々木卓也(ささき・たくや)

野外歴史地理学研究家。第35回広島文化賞受賞(平成26年度)。昭和29(1954) 年8月1日、広島市佐伯区生まれ。間学苑:時空人論研究所主宰、ひろしま歴史街道トリップ実行委員会座長、広島地名研究会事務局代表、石垣を讃える会代表世話人、棚田学会会員(元監事)、広島市内公民館活動団体指導員、中国新聞文化センター専属講師。広島県立広島観音高等学校卒業、奈良大学文学部地理学科卒業、広島大学大学院文学研究科研究生終了、京都大学教養部人文地理学教室研修員修了。国立呉工業高等専門学校・国立広島商船高等専門学校・国立大島商船高等専門学校・広島修道大学短期大学部講師を歴任。広島県史編纂室第三部会委員・広島市教育委員会調査委員・奈良広島両県町村史編纂委員を歴任。主著『芸備両国の条里遺構』(溪水社)、共著『広島県地名大辞典』(角川書店)、『日本地名基礎辞典』(日本文芸社)、『日本石造文化事典』(朝倉書店)ほか。専門は歴史地理学・地域民俗学・文化人類学・日本地名学ほか。趣味は歴史街道散策・石垣景観探訪・旅行企画策定など。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 広島の話』
監修:佐々木卓也


【Amazonで購入する】

●なぜ広島には路面電車が多いのか?
●なぜ嚴島神社は“海の上”に建てられたのか?
●なぜ広島の食文化はこれほど独特なのか?

その答えは、ガイドブックには載っていない――。

シリーズ累計400万部突破!
眠れなくなるほど面白い図解シリーズの“エリア本”最新作!!

本書は、名所や観光スポットの紹介ではなく、
「なぜそうなったのか?」という“理由”から広島を読み解く一冊です。

古代の遺跡や神話の痕跡にはじまり、
瀬戸内海を支配した水軍、城下町の発展、近代化と軍都の歴史、
そして原爆投下という出来事まで――。
広島の歩みをひもとくと、現在の街の姿や文化の背景が見えてきます。

さらに、牡蠣やお好み焼き、レモン、日本酒などの食文化、
全国でも珍しい交通事情や地形の秘密、
思わず人に話したくなる雑学までを網羅。

・広島で見つかった日本最古級の石器の謎
・「草戸千軒」と呼ばれた幻の都市とは?
・広島に地下鉄がない本当の理由
・縄文時代から続く“牡蠣文化”のルーツ
・「ヒバゴン」など不思議な伝説の正体

など、知れば知るほど面白いテーマが満載です。

一見バラバラに見える歴史・文化・地理は、すべてつながっている。
その“つながり”を知ったとき、広島の見え方は一変します。

図解だからスッと理解できて、誰かに話したくなる。
知識が一気につながる快感を味わえる一冊です。

読むだけで終わらない。
広島という街の“本当の面白さ”に気づく一冊です。

この記事のCategory

求人情報

インフォテキストが入ります