家族で知っておきたい「バウンダリー」という概念 家の中で「よそ行きの顔」が必要なワケ【しんどい人間関係に境界線をつくる 心地いいバウンダリー】

家族がいちばん「境界の混乱」に陥りやすい
誰しも家の玄関を一歩出ると、どこかで身構えて「よそ行きの自分」になり、言葉遣いや振る舞いに気をつけるようになります。でも、家族同士にはそうした身構えがありません。だから、平気で相手の「境界」に土足で踏みこんでいきます。
同じことを伝えるにしても、家族以外には「もうちょっと丁寧に伝えたほうがいいかな」と気を遣いますが、家族には「それくらいわかるだろう」と考えてつっけんどんな物言いになったり、ジェスチャーだけで伝えようとしたりすることがあります。
このように、家族は少なからず「境界」があいまいになっているか、「境界」がない状態にある場合が多いのです。
家族の「境界の混乱」のわかりやすい例をひとつ挙げましょう。子どもがボール遊び禁止の児童公園でキャッチボールをして、うっかり近所の家の窓ガラスを割ってしまいました。あなたがその子の親なら、どのように責任をとりますか?
「責任の境界」が混乱していると、「子どもの不始末はすべて親がとるべき」「当事者である子どもがすべて責任をとるべき」などと考えがちです。しかし、実際にはガラスを割った子どもには実行責任があり、子どもにルールを守らせることができなかった親には養育責任があります。ですから、親子で一緒に迷惑をかけた相手に謝罪をし、経済力のない子どもに代わって親が弁償するのが正しい対応と考えられます。
「境界の混乱」は親子に支配・被支配の関係をつくる
親子はとくに「境界の混乱」が起こりやすく、親が子どもの陣地に入って「境界線」を引くこともままあります。その一例を挙げていきましょう。
「からだの境界」の混乱
子どもの部屋が散らかっているので、子どもが学校へ行っている間に部屋をかたづけた。
「感情と意志の境界」の混乱
高校生の息子が「〇〇大学に行きたい」といい出したが、「将来を考えて××大学にしなさい」と伝えたら口論になった。
「責任の境界」の混乱
小学生の息子が学校でトラブルを起こして、親が学校に呼び出された。子どもの口からは事情を聞いていなかったが、担任の先生から「親御さんの責任でもありますから」といわれて、納得がいかないまま「申し訳ありません」と謝罪した。
こうした「境界の混乱」は支配・被支配の関係をつくり、親子の間に対立と緊張を生んでしまいます。
NOTコントロール、すなわち子どもを支配しない対等な関係をつくるためには、親がバウンダリーを学んで実践し、少しずつ「境界」を引き直すことが大切です。
家族は「身構え」がないため「境界」が混乱しやすい
土足で長女の「境界」に立ち入る母親、自由に振る舞う父親、太い「境界」で家族と一線を引く次女。「家族なんだから」という合言葉のもと、家族の「境界」はどんどん混乱し、混乱が極まるとさまざまな問題が生まれます。

【出典】『しんどい人間関係に境界線をつくる 心地いいバウンダリー』著:長谷川俊雄/イラスト:高木ことみ
【著者紹介】
長谷川 俊雄
白梅学園大学名誉教授、社会福祉士、精神保健福祉士、NPO 法人つながる会代表理事、social work lab MIRAI 代表。
1981年から横浜市役所の社会福祉職として現場で活動したのち、精神科クリニックのソーシャルワーカーに転職。その後、愛知県立大学での教員経験を経て、2009年に「NPO 法人つながる会」を設立。2010年から白梅学園大学に移り、教育・実践・政策提言に携わる。2023年に「social work lab MIRAI」を開設し、援助職支援や家族支援にも取り組む。「バウンダリー」についてのワークショップを各地で行っている。
【イラストレーター紹介】
高木ことみ
ゆるくてかわいいイラストを制作するイラストレーター。とくに、難しい内容を図やイラストを用いてわかりやすく伝えることが得意。見ている人に親しみを感じてもらえるような表現を心がけている。おもな作品に『ゆるゆる稼げるWeb ライティングのお仕事はじめかたBOOK』(技術評論社/表紙・本文イラスト)、『今度こそ「不安ぐせ」をゆるめるポリヴェーガル理論』(日本文芸社/表紙・本文イラスト)など。
【書誌情報】
『しんどい人間関係に境界線をつくる 心地いいバウンダリー』
著:長谷川俊雄/イラスト:高木ことみ
「バウンダリー」とは、自分と相手の合意のもと「ここからは立ち入らないでね」という境界線を引くことで、「わたし」と「あなた」の安心・安全・尊厳を守る考え方です。
本書はこの境界線を引く考え方から、仕事・家庭・人づきあいの中のしんどい場面で実践できる具体的な対処法まで、あわせて紹介します。
・怒っている相手に委縮してしまう
→「hear」「listen」「ask」3つの「聞く」を使い分ける
・NOと言えない
→即答せず「持ち帰る」だけでもOK
・苦手な目上の人がいる
→相手への「評価」の置き方を変えてみる
・長い会議で人疲れする
→深呼吸や簡単な瞑想で境界線をリセット など
人間関係をもっとラクに、安心・安全にするために、「わたし」と「あなた」のあいだに心地いい境界線をつくるためのアイデアを紹介します。
「仕事や責任を押しつけられて、いつも自分ばかり損をしている」
「人の言動や気持ちに影響されて、振り回されてしまう」
「人を優先しすぎて、自分の時間や人生がすり減っていく」
「つい家族やパートナーに干渉しすぎてしまう」
「人間関係がしんどくなり、リセットを繰り返してしまう──」
こうした人間関係の悩みの根本には、バウンダリー(境界線)の混乱が隠れているかもしれません。
バウンダリーの考え方を取り入れることで、これまでとは違う視点から人間関係の問題を整理し、自分をすり減らさない選択ができるようになります。
■バウンダリーを5つのカテゴリで整理
バウンダリーを
「からだ」「感情・意志」「責任」「時間」「お金」
という5つの領域に分けて紹介。
人間関係の悩みがどの境界線の混乱から生まれているのかが見え、状況を冷静に捉えやすくなります。
■「ライン」と「ベルト」で境界線を使い分ける
境界線を細い「線(ライン)」だけでなく、状況に応じて幅をもたせた「ベルト」として捉える考え方も提案。
相手や場面によって無理なく距離を調整する方法がわかります。
境界線を引けるようになると、
・自分のからだと心を危険や消耗から守れる
・安心・安全で心地よく過ごせる
・誰にも支配されず、自分の感情や考えを大切にできる
・自分の行動や価値を、自分で決められる
ようになります。
しんどい人間関係に悩むあなたへ。
自分も相手も尊重しながら、人と関わるための一冊です。
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