子どもの発達段階に合わせて変化する!幼児・学童期の認知機能で知っておきたいこと【発達が気になる子の認知遊び】

乳児期・幼児期・学童期に大切にしたいこと

☑ 7つの領域は互いに関連し合い、遊びや生活経験を通して育つ
☑「安心して試す→考える→できた」の循環が認知発達の原動力になる
☑ 発達段階に合った関わりが、生活の理解と行動の安定を支える

発達の時期に応じて、大切にしたい関わりの視点②

●幼児期(3~6歳頃)

①知覚(見る・聞く・触れることで世界を整理する)

 見る・聞く・触れるといった感覚を通して世界を整理しはじめる時期です。形・大きさ・音・匂いなどを区別し、「同じ・違う」「大きい・小さい」などの比較概念を理解します。これらの体験は、分類・数・言葉の理解の基礎になります。砂・水・粘土などを扱う感覚遊びは、手や体を使って物の性質を感じ取り、知覚の精度を高めます。また、体の動きを通して空間認知が育ち、転んでも立ち直るなど身体感覚の安定にもつながります。感覚が統合されることで、集中力や落ち着きも育まれます。

②注意・処理(目の前のことへの集中力が伸びる)

 目の前の遊びや話に「集中する」力が伸びる時期です。同時に、多くの刺激のなかから必要な情報を選び、他を無視する選択的注意も育ちます。たとえば、先生の話を聞くために手を止める、友だちの声に気づくといった行動です。無理に集中することを強いるよりも、好きな遊びにじっくり取り組む経験が注意力の土台になります。短い時間でも集中できたと認めることで、「集中できる自分」という自己効力感が高まり、持続的注意へと発展します。

③記憶(記憶が発達する)

 「覚えて思い出す」経験が増える時期です。昨日のできごとを語ったり、歌や物語を覚えたりすることで、短期記憶から長期記憶へと発達します。絵本や手遊び、くり返し遊びが記憶の安定を助けます。楽しい経験や感情を伴うできごとほど記憶に残りやすく、学びへの意欲も高まります。また、「あのときこうした」という体験を言葉で再現することが、思い出す力(想起)を育み、思考の整理にもつながります。

④言語思考(言葉を使って思考が発達する)

 言葉の爆発期ともいわれ、語彙が急増し、言葉を使って考えを整理できるようになります。「どうして?」「なぜ?」という質問が多くなるのは、思考の発達の表れです。言葉で気持ちを表現する経験を重ねることで、感情のコントロールも育ちます。ごっこ遊びや絵本の読み聞かせは、想像力と論理的思考を育てる最良の機会です。相手との会話を通して「伝える」「聞く」力が伸び、コミュニケーションの基礎が形づくられます。

⑤実行機能(気持ちや行動を調整する力が育つ)

 目的をもって行動する力や、行動を順序立てる力が育つ時期です。「片づけをしてからおやつ」「順番を守る」といった経験が、自己制御や行動の調整力を支えます。遊びのなかで「やりたい→試す→できた」の体験を重ねることで、自分で考えて行動する力が伸びます。小さな成功体験の積み重ねが、達成感と意欲につながります。

⑥社会的認知(相手の立場への理解が芽生える)

 友だち・おとなの気持ちや立場を理解する力が芽生えます。ごっこ遊びや協同遊びを通して、ルールや順番、他者の行動の意味を学びます。トラブルの経験も社会的理解の材料になります。おとなが気持ちを言葉で代弁することで、子どもは他者の感情を理解し、共感力を育むことができます。

⑦メタ認知(意識して自分の状態を振り返る)

 自分の行動や気持ちを振り返る力が芽生える時期です。まだ完全には自分を客観視できませんが、「できた・できない」を経験することで、自分の状態を意識しはじめます。おとなが「びっくりしたね」「うれしかったね」と共感して受け止めることで、気持ちを整理し、次の行動につなげる力の土台を育みます。

イラスト:おおたきょうこ

●学童期(6歳~12歳頃)

①知覚(感じた情報を学習、生活などに活かせる)

 感覚情報を精密に分析し、学習に活かす力が伸びる時期です。文字や図形の識別、聞いた情報の理解、音楽や運動の体験など、知覚が学習や生活行動の土台になります。視覚・聴覚の統合が進み、黒板を見ながら指示を聞くなど、複雑な情報処理も可能になります。多様な感覚を活用する経験は、注意力や問題解決力にも影響します。

② 注意・処理(注意力が高まり集中することができる)

 必要な情報を選び取り、一定時間集中して課題に取り組む力が発達します。授業中の聞き取りや計算、作業の遂行に必要です。課題を小分けにしたり、環境刺激を整理したりすることで集中しやすくなります。「今何をする時間か」を明確に伝えることも、注意の切り替えをスムーズにします。注意力は学習だけでなく生活リズムの安定にも直結します。

③記憶(経験と知識を意味づけて理解する)

 意味づけを伴った記憶(意味記憶)が発達する時期です。「なぜそうなるのか」を理解しながら覚える力が伸び、経験や知識を結びつけて活用できるようになります。学習では、単に暗記するのではなく、自分なりの整理や方法を考えることが重要です。経験の振り返りを通して記憶力を伸ばし、問題解決や自己管理にも活かせます。

④言語思考(論理的思考や表現力が伸びる)

 論理的な言語思考が発達する時期です。文章理解、要点整理、意見表現、推論などが可能になります。語彙や表現力の幅が広がることで、抽象的な概念や感情も扱えます。作文やディスカッション、発表の機会を通して、自分の考えを根拠をもって伝える力が育ちます。学習面だけでなく、友人関係や自己理解にも深く関わります。

⑤実行機能(計画性と自己効力感が高まり育つ)

 計画を立て、順序を考え、自己制御しながら課題を達成する力が伸びる時期です。宿題や日課の管理、学習計画の立て方などが重要です。おとながチェックリストや振り返りを用意してサポートすると、自分で調整する力が育ちます。遊びや学習のなかで成功体験を積むことで、計画性と自己効力感が高まります。

⑥社会的認知(思いやりや協調性を学び、それらが高まる)

 他者の気持ちや社会的ルールを意識し、状況に応じて行動を調整する力が伸びる時期です。友人関係やグループ活動のなかで思いやりや協調性を学びます。おとなは感情のラベル付けやフィードバックを通して、子どもが他者の立場や感情を理解する手助けをします。社会的認知の発達は、集団生活や協力行動の基盤になります。

⑦メタ認知(意識して自分の考えを振り返る)

 自分の考えや理解度を客観的に振り返る力が育つ時期です。学習では「どう考えたか」「どう覚えたか」を意識的に振り返ることで、次の課題への調整力が伸びます。間違いを恐れず、思考過程を評価する経験が重要です。メタ認知の発達は、学習効率を高めるだけでなく、自己管理や自己理解の力を支えます。

イラスト:おおたきょうこ

【出典】『発達が気になる子の認知遊び』著:藤原里美

【著者情報】
藤原里美(ふじわら・さとみ)
一般社団法人チャイルドフッド・ラボ 代表理事/臨床発達心理士/保育士
公立保育園・東京都立梅ヶ丘病院・東京都立小児総合医療センター・明星大学非常勤講師を経て現職。
発達障害のある子どもの療育、家族支援を行うとともに、園の巡回や発達支援の研修など、支援者育成にも力を注ぐ。「子どもを変えずに、子どもの周りの世界を変える」支援方法により、現場や家庭で実現可能な実践方法を発信している。

【書誌情報】
『発達が気になる子の認知遊び』
著:藤原里美


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楽しい遊びを通して、子ども自身が困っていることの解決をめざす大人気シリーズ。

認知発達とは、見る・聞く・記憶する・覚える・考える・予測するなど、情報をキャッチし、物事を理解して考える力が育っていく過程を指します。

わたしたちは日常のなかで多くの情報を受け取り、その情報をあたまのなかで「整理して」、「次にどうするかを判断」しています。
認知発達はこの一連の過程を支える基盤であり、学習だけでなく、生活全般や人との関わり方に深く関係しています。

・遊びが続きにくい
・集団遊びに入りづらい
・指示が入りにくい
・切り替えが難しい
・ルールのある遊びが苦手 など発達が気になる子にとって、
認知発達を育む遊びは特に重要です。

本書で紹介する150個の「認知発達遊び」は、日常のなかで遊び、関わりながら、
その子のペースで認知の土台を育てていくためものです。
認知発達をつぎの7つの領域に分けて解説し、それぞれの領域を育てる具体的な遊びの提案をしています。
1知覚
2注意・処理
3記憶
4言語思考
5実行機能
6社会的認知
7メタ認知

診断の有無にかかわらず支援したいとき、「教える」より「育てる」関わりを大切にしたい場面などで、
それぞれの発達段階にあわせながら、無理なく取り入れられる遊びを紹介します。

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