【マンガ演出論】1秒間の「判断と葛藤」をどう表現するか?野球漫画『ハイタッチ』が見せるセリフに頼らない圧倒的臨場感と心理描写

スポーツマンガの醍醐味は、選手が知覚する「一瞬の時間」をいかに表現し、葛藤を視覚化できるかにあります。

渡辺保裕氏の最新作『ハイタッチ』では、セリフだけに頼らない圧倒的な作画演出が光ります。

視線誘導で描く「1秒間の思考スピード」

フライが上がった瞬間、球場のスコアボード、予想捕球エリア、そして三塁走者の動きが図解的なレイアウトとともに提示されます。読者は主人公・惟の視点を追体験し、「捕ればサヨナラ負け」というリスクと恐怖を視覚的に体感できます。

そしてグラブの直前でボールをすり抜けさせるコマでは、スピード感を保ちつつも時間が止まったかのような「静」の描写が挟まれ、1秒未満の決断の重みと臨場感が伝わってきます。

「震える手」と「涙」——セリフを超えた身体表現

高校生になった惟がボールを握りしめる場面では、セリフはほとんど使われません。

ただ、ボールを持つ手がぶるぶると震え、そこに一滴の涙がぽたっと落ちるクローズアップが連続して描かれます。

言葉で語ることのできない、ずっとフタをしてきた野球への情熱と大好きな思いが涙となって溢れたのでした。

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『ハイタッチ(1)』©渡辺保裕/日本文芸社

【書籍情報】
『ハイタッチ』/渡辺保裕

千葉・鴨川の高校に通う小玉惟(こだまゆい)は、かつて元気いっぱいの野球少年だったが
いまは、心を閉ざして日々を過ごしていた。
そんな惟を野球部に連れて行く女子が現れる!
だが、彼は過去のトラウマから入部を断り…。
いつかの野球少年が、もう一度白球に触れ心を取り戻していく!
“ハイタッチ”毎に、交代する「主人公」。
全員主役×全員全力で描破される、チーム漫画の最前線!!
青い海、青い空、眩しい太陽、潮の香り…鴨川出身の作者が描く一生の中で一番輝く、唯一無二のド青春・高校野球物語。

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