プロの作家が実践する臨場感の作り方!登場人物のフィルターを介して風景を描く重要性【賞を勝ち獲る小説の書き方】

\編集者の心をつかむ 人物・情景・心理の文章表現技法/

情景がパッと浮かぶリアルな文章表現

場面を読んで、映像が一瞬で浮かぶようになっているでしょうか。色や匂い、温度といった五感が刺激された瞬間、物語は読者の中で現実になります。

POINT

  • 色や音など感覚を織り込んで想像させる
  • 五感情報は量より選択が重要となる
  • 詰め込みすぎず、ビジュアライズを機能させる

【編集者】五感の情報を織り込み場面を自然にイメージさせる

 編集者が文章を読んでまず判断するのは、場面が頭に浮かぶかどうかです。光の色、音の反響、空気の温度、人物との距離感――こうした五感の“手がかり”が自然に織り込まれることで、読者は場面を「理解する」のではなく「見ている」感覚になります。ビジュアライズとは、五感の連動で場面に立体感を与える技術です。

 しかし、色、音、匂い、温度の情報をすべて書けばビジュアライズされるというわけではありません。たとえば「湿った夜気の中、街灯の光が足元だけを薄く照らす」と書けば、湿度・光量・位置関係が一瞬で伝わり、読者はその空間へ入り込みます。重要なのは、想起させる五感を選ぶ判断です。

 ビジュアライズが機能すると、読者は説明を読んでいるという意識を失います。編集者が求めているのは、その没入感なのです。どの感覚を使えば場面が立ち上がるかを意識してみましょう。

【作家】情報を取捨選択してビジュアル化する

NGな例

信号が青に変わって、いっせいに歩きはじめる人たち。背後からの突風に押されるように私も前へと歩いていく。やがてゆっくりと西に傾く太陽。明かりを灯す高層ビル。都会の景色がどこか冷たく映るのは、自然が少ないからだろう。

① 情景を書きながらも「私」の視点による感覚描写が弱い
② 季節や場所の情報が曖昧で読者は具体的なイメージ想起が困難

風景や状況を連ねるだけで臨場感のある場面は成立しません。その情景にいる人物のフィルターを介した「プラスα」の感じ方が不可欠です。

OKな例

スクランブル交差点の信号が青に変わる。号令に従うみたいに動く人だかり。大都市独特の乾いた風に背を押され私も前へと動かされる。暮れなずむ空はどこか寒々しい。冷たい光を放つ高層ビルばかりそびえ、緑や花の匂いがしないせいかもしれない。

① 都会を連想させるキーワードの選択で状況を明確に提示
② 茫漠とした孤独感を描くことで読者の共感度を高めている

読者が共感しやすい情報を取捨選択して文章群を構成すると、多種多様な臨場感あるビジュアル表現が実現します。

 【出典】『プロの編集者&小説家が教える クリエイターのための賞を勝ち獲る小説の書き方』著:秀島迅/監修:Nola編集部/イラスト:真崎なこ

【著者紹介】
秀島迅
青山学院大学経済学部卒。2015年、応募総数日本一の電撃小説大賞(KADOKAWA)から選出され、『さよなら、君のいない海』で単行本デビュー。小説家として文芸誌に執筆活動をしながら、芸能人や著名人のインタビュー、著述書、自伝などの執筆も行なっている。近著に長編青春小説『その一秒先を信じて シロの篇/アカの篇』二作同時発売(講談社)、語彙力図鑑シリーズなど著書多数。また、コピーライターや映像作家としての顔も持ち、企業CM制作を現在も月10本以上手がけている。

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【書誌情報】
『プロの編集者&小説家が教える クリエイターのための賞を勝ち獲る小説の書き方』
著:秀島迅/監修:Nola編集部/イラスト:真崎なこ


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