完成までなんと632年!世界最大級の「ケルン大聖堂」の美しい景観を守った都市の決断【眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産】

10の基準で読み解く「一度は行きたい世界遺産」

10の登録基準に沿って代表的な世界遺産を紹介。景観だけではない、真の魅力が見えてきます。


登録基準(ⅳ)建築様式や建築技術、科学技術の発展段階を示す遺産

「ケルンの大聖堂」完成まで632年…執念の?傑作

 ドイツ西部、ライン川のほとりに建つ「ケルンの大聖堂」は、尖塔の高さが約157mもあるゴシック様式の大聖堂として世界最大規模を誇ります。この大聖堂が特別な意味を持つのは、1164年にミラノから「東方の三博士の聖遺物(遺骨)」がもたらされたことにあります。

 東方の三博士とは、イエス・キリストの誕生を祝福し、ベツレヘムを訪れた占星術に通じた賢者たち。幼子イエスの降誕を「新しいユダヤの王」として祝福しました。聖遺物を納めた黄金の聖櫃は、今も高祭壇近くの象徴的な存在です。以後、ケルンはキリスト教の巡礼者にとって重要な巡礼地のひとつとなりました。

 大聖堂の建設は1248年に始まり、度重なる資金不足により約300年の長い中断を経て、着工から632年後の1880年に完成しました。内部には、巨大な黒色石灰岩の一枚岩で造られた主祭壇をはじめ、彫刻を施した聖歌隊席、ヨーロッパに現存する14世紀初頭のものとしては最大級となるステンドグラスなどが美しい状態で残されています。

 また、祭壇画などの貴重な美術品も多く、中でも第二次世界大戦の復興に加わった現代芸術家ゲルハルト・リヒターの幾何学的なステンドグラスは、伝統的な空間にモダンな光を差し込む存在として異彩を放っています。 

【THINK!】伝統的な聖堂に現代アートを加えるのはアリ?


ここがスゴイ!認定ポイント 信仰は天に伸びる。荘厳さは神の表れ

12世紀末から、フランスのパリ一帯を発祥とするゴシック様式は、技術の進歩により天に伸びるような壮大な大聖堂建築を可能にしました。高い天井や大きなステンドグラスの窓を特徴とし、その圧倒的なスケールと窓から差し込む光が「神は光なり」というキリスト教の世界観を表現しています。

世代を超えた建築

構想を担った建築家ゲルハルトによる計画は、世代を超えて受け継がれ、何段階にも分けて建設が行われたにもかかわらず、当初の計画を忠実に表現したゴシック大聖堂が誕生しました。

【1248年 着工】すごい教会を造るぞ!

【約300年間 中断】お金がない…

【1880年 完成】632年も掛かった!

【未来につなぐために】景観が揺らげば、価値も揺らぐ

2004年、都市開発計画における高層建築によって景観が損なわれる懸念からケルンの大聖堂は「危機遺産リスト」に掲載されました。しかし、市当局が建物の高さ規制などの対策を進め、保護の枠組みが整ったことで2006年に危機を脱します。世界遺産を守るには、建物だけでなく景観の保全も不可欠なのです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産』監修:宮澤 光 / イラスト:どくだみ三銃士

【監修者紹介】
宮澤 光(みやざわ・ひかる)
NPO法人世界遺産アカデミー主任研究員。北海道大学大学院博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。2008年より現職。跡見学園女子大学非常勤講師。世界遺産に関するさまざまな書籍の編集・執筆・監修を手掛けるほか、「チコちゃんに叱られる!」(NHK)などの多くのメディア出演や、全国各地で100本を超す講演・講座を実施している。著書に『13歳からの世界遺産』(マイナビ出版)、『世界遺産のひみつ』(イースト・プレス)など。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産』
監修:宮澤 光


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