知的で冷徹な最高神オーディン【世界の神々】

神も人間も神通力で牛耳る最強知能を持つ

北欧神話の主役は、強烈な威厳を放ち、アース神族の頂点に立つ最高神オーディンです。

兄弟のヴィリ、ヴェーとともに巨人ユミルを殺害。その肉体で天地創造を成し遂げます。

万物を生み出し、戦争、死、知識、詩芸などを司（つかさど）り、呪術（じゅじゅつ）で世界を支配する最強の神は、2本の流木から人間をも創造しました。

つばの広い帽子を目深にかぶり、青いマントを翻（ひるがえ）し、魔法の槍（やり）グングニルを手にした老神として描かれるオーディン。8本足の愛馬にまたがり、2頭の狼と2羽のカラスを従えてユグドラシルを縦横無尽に駆け巡ります。

知的欲求もとても強く、ルーン文字の秘術を手に入れるために自分の身体に槍を刺し、9日9晩にわたってユグドラシルの枝に体を吊（つ）るすという強烈なエピソードも。

戦闘の神と崇（あが）められ、庇護（ひご）を求める者には勝利をもたらす反面、戦争を起こし、神の命も人間の命も問わずに突然なきものとするなど性格はかなり冷徹。また、誠実とはいいがたい女性遍歴も数多く描かれています。

冷酷で非道ともいえるオーディンですが、最終戦争ラグナロクで滅亡するという予言に怯（おび）えます。用意周到に戦闘態勢を整えて死闘に挑むものの、巨人族の狼フェンリルに飲み込まれ、あえなく最期を迎えます。

＊ルーン文字：ゲルマン人が用いていた古い表音文字で、紀元後100年～200年頃まで使われていたとされる。ラテン文字にとって代わられた

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』
著者：鈴木悠介　　日本文芸社刊