広島弁は標準語に近い?鎌倉時代の歴史と東国武士の定着【眠れなくなるほど面白い 図解 広島の話】

知っているようで意外と知らない!? 広島弁講座

広島弁は標準語に近い?

 一般的に、広島弁のイントネーションは標準語に近いといわれています。なぜなのでしょうか?

 平安時代末まで広島県域では、畿内の朝廷・摂関家・有力寺社などの荘園が多くあり、平清盛が安芸の守となったあとは平家の所領も増えました。しかし、壇ノ浦の戦いで平家が滅亡し、さらに承久の乱で鎌倉幕府が勝利して以降、幕府は中国地方一円に守護・地頭を置き、源氏やその御家人などが居着いたことで、それまでの京風の都言葉に代わり、東国武士の言葉が定着していったのです。毛利と小早川は相模、吉川は駿河、武田は甲斐、熊谷は武蔵、平賀は出羽、宍戸は常陸など、その出身地は多彩です。しかし、瀬戸内海南岸の伊予国河野は、源平争乱の際にすでに源氏側についていたため都言葉が残り、関西弁に近い方言になりました。広島言葉はその後変転し、今の広島弁となったのです。


「うまいでがんす」は間違い?

 民放のテレビ番組から広まった「うまいでがんす」という広島県民にはお馴染みの言葉がありますが、本当は「うもうがんす」が正解です。

 「がんす」は、「でございます」という意味の丁寧な言葉で、江戸時代の「ござんす」という表現が変化したもの。通常は、名詞のあとに「で」をつけたあと「がんす」となり、「ここは広島でがんす」といった形で使います。また、状態を表すときには「そうでがんす」「ほうでがんす」などといいます。ところが形容詞のあとに「がんす」をつける場合には音便化し、「おもろうがんす」「えろうがんす」「うもうがんす」となり、高齢の広島人にはこの用法が当たり前でした。

 ただし、今の人たちは「がんす」をあまり使わず、平素は「じゃけぇのぉ」がよく使われます。


「広島にゆく」の意味とは?

 昔から芸予諸島をはじめ瀬戸内海沿岸では、「広島にゆく」または「広島へたばこを買いにゆく」という表現が使われてきました。これは忌み言葉で「あの世に参る」という意味を持っています。

 なぜ、そうなったのか? それは、安芸国では佐伯氏から平家を経て関東武士に領主が代わり、さらに広島城下では毛利・福島・浅野と入封したものの最終的には皆、その地を追われました。そのため広島の地は安住できず、やがて彼の地へと旅立つ――つまり他界すると解釈されたようです。


安芸のと抜けと備後ばあ

 広島はもともと安芸と備後という異なる国でした。また、近世には広島を中心とした安芸地方は広島藩、福山を中心とした備後地方は福山藩であったため、方言もかなり違っています。

 広島弁については、古来「安芸のと抜けと備後ばあ」とたとえられてきました。安芸地方では、「~という」の意味で、助詞の「と」を省いて「~いう」といいます。また、「と」以外の助詞も省いて、「~(を)くう」「~(が)くる」とする場合が多いです。一方、備後地方では、福山藩に尾張水野氏が入ったことで少し名古屋弁に近い方言となり、「~ばあいう」や「~ばあくう」などと、「~ばかり」という意味で「ばあ」を多用します。なお、「ばあばあいう」と重ねて用いることもあります。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 広島の話』監修:佐々木卓也

【監修者情報】
佐々木卓也(ささき・たくや)

野外歴史地理学研究家。第35回広島文化賞受賞(平成26年度)。昭和29(1954) 年8月1日、広島市佐伯区生まれ。間学苑:時空人論研究所主宰、ひろしま歴史街道トリップ実行委員会座長、広島地名研究会事務局代表、石垣を讃える会代表世話人、棚田学会会員(元監事)、広島市内公民館活動団体指導員、中国新聞文化センター専属講師。広島県立広島観音高等学校卒業、奈良大学文学部地理学科卒業、広島大学大学院文学研究科研究生終了、京都大学教養部人文地理学教室研修員修了。国立呉工業高等専門学校・国立広島商船高等専門学校・国立大島商船高等専門学校・広島修道大学短期大学部講師を歴任。広島県史編纂室第三部会委員・広島市教育委員会調査委員・奈良広島両県町村史編纂委員を歴任。主著『芸備両国の条里遺構』(溪水社)、共著『広島県地名大辞典』(角川書店)、『日本地名基礎辞典』(日本文芸社)、『日本石造文化事典』(朝倉書店)ほか。専門は歴史地理学・地域民俗学・文化人類学・日本地名学ほか。趣味は歴史街道散策・石垣景観探訪・旅行企画策定など。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 広島の話』
監修:佐々木卓也


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