「野球だけはやらない」とフタをした少年の心が決壊……久々に握ったボールの感触と一滴の涙が暴いた“本当の気持ち”|野球漫画『ハイタッチ』

「オレ、野球だけはやらない」——そう固く心に誓い、情熱から目を背けていた少年。

しかし、ふとしたきっかけで掌に収まった硬式ボールの感触が、封印していたはずの熱い想いを一気に解き放ちます。

渡辺保裕氏の『ハイタッチ』第1話(月刊コミックヘヴン)が描く、単なるトラウマ克服を超えた「本音の決壊」のドラマが、読者の涙を誘っています。


「自分を信じられない」——言葉の呪縛と抑え込んだ情熱

少年野球のラストゲーム、同点・1死3塁という土壇場。主人公の小玉惟は、チームの勝利を考え抜いた結果、ファールフライをあえて捕球しない「故意落球」の判断を下しました。しかし、その後の打席でチームは失点し、サヨナラ負けを喫してしまいます。

失意の中、監督から告げられた一言——「あのファールフライ…お前が自分を信じられればな」。

その言葉は惟の胸に重く突き刺さり、「自分の判断が間違っていたのか」「自分がチームを負けさせたのか」という強い葛藤を生んでしまいます。

野球を辞め、祖父と二人暮らしを始めた惟は、傷ついた心にフタをするように「オレ 野球だけは やらない」と心に決め、野球から距離を置く選択をします。


身体は覚えていた——咄嗟にボールを掴んだ瞬間

しかし、彼の心と身体は「野球」を忘れてなどいませんでした。

惟を野球部へと連れて行った少女に向かって、ボールが飛んできた瞬間、惟の身体は反射的に「ばちっ」と素早く反応し、見事にボールを掴み取ってみせます。

彼の身体には天才的なセンスと野球への本能が確かに刻み込まれていたのです。


掌に伝わるボールの感触——抑え込んできた感情の溢出

身体が自然とボールを掴んだ直後、惟の心に猛烈な感情の波が押し寄せます。 久々に触れた本物の野球ボール。その革の縫い目の触感が手に伝わった瞬間、彼の手はぶるぶると震え始めます。

「もう野球はやらない」と自分に言い聞かせ、必死に抑え込んできた野球への情熱、後悔、そして「本当はまた野球がしたい」という本心が、掌の感触によって一気に決壊したのです。

震える手でボールをギュッと握りしめると、大粒の涙がぽたぽたとボールの上に落ち、彼はボールを抱え込みながら「うあああああああああ」と大声を上げて泣き崩れてしまいます。


仲間たちとの「みんなで」と止まっていた時の動き出し

そこへ少女が手渡したのは、かつて彼が被っていた少年野球チームの帽子でした。 帽子の内側に書かれていたのは、「みんなで 小玉 惟」という言葉。

「君の涙 いいと思うよ」という少女の言葉とともに、胸に閉じ込めていた熱い想いを解放した惟は、止まっていた自らの青春を再び歩み始めます。

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『ハイタッチ(1)』©渡辺保裕/日本文芸社

【書籍情報】
『ハイタッチ』/渡辺保裕

千葉・鴨川の高校に通う小玉惟(こだまゆい)は、かつて元気いっぱいの野球少年だったが
いまは、心を閉ざして日々を過ごしていた。
そんな惟を野球部に連れて行く女子が現れる!
だが、彼は過去のトラウマから入部を断り…。
いつかの野球少年が、もう一度白球に触れ心を取り戻していく!
“ハイタッチ”毎に、交代する「主人公」。
全員主役×全員全力で描破される、チーム漫画の最前線!!
青い海、青い空、眩しい太陽、潮の香り…鴨川出身の作者が描く一生の中で一番輝く、唯一無二のド青春・高校野球物語。

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