【特別対談】決定版図鑑『AGAVES アガベ』監修者×翻訳者が語る「脳髄を打撃する」絶景と命がけの探索

世界のアガベシーンを網羅した決定版図鑑『AGAVES アガベ』の日本語完訳版がついに刊行。日本語版の監修を務めた植物研究家・園芸家のShabomaniac!氏と、翻訳を手がけたアガベ愛好家であり進化生物学の研究にも取り組んでいるdog.keeper氏による特別対談をお届けします。過酷な自生地を生き抜くアガベの「究極の姿」と、制作陣が惚れ込んだ禍々しくも美しいアガベの正体に迫ります。

―― 本書には圧倒的なビジュアルが多数収録されていますが、お二人が最も「脳髄を打撃された(衝撃を受けた)」1枚はどれですか?

dog.keeper:僕は「ペローナ」ですね。栽培下では比較的地味な印象のアガベなのですが、この写真の個体は白く長いトゲに加え、過酷な環境が生み出したストレスカラーが葉縁に現れ、幽玄な美しさをまとっています。ロゼット(葉の放射状の配列)も見事で、岩肌に根を下ろすその姿は、素晴らしいの一言です。

ペローナ(A. pelona)。白い刺の美しさと迫力が際立つクローズアップした写真は、ぜひ本書でご覧ください。

Shabomaniac!:栽培品であの姿になっているのは見たことがないですね。非常に成長が遅いので、芽生えてから10年単位の時間が経っているはずです。

dog.keeper:ペローナの自生地は、落石の危険がある難所続きのオフロードを四駆で駆け抜け、足元の定まらない急斜面を這い上がった先にあるそうです。人が容易に辿り着けないような場所で、この素晴らしい個体を目の当たりにしたときのジェレミーの感動は、計り知れないものだったのではないでしょうか。

このように、アガベの自生地は人が簡単に立ち入れない場所にあることが少なくありません。中には、切り立った岸壁に這いつくばるように生育しており、近づくにはジェットパックが必要ではないかと思えるほど険しい場所に生えるアガベもあります。まさに命懸けの現場も多く、ジェレミーは骨折しながら撮影したものもあるそうですよ!

チェンソーとジェットパック!? 未踏の地に眠るロマンへ命がけのフィールドワーク

dog.keeper:一つに絞りきれないので、欲張ってもう一つ挙げると、「マナントラニコラ」という希少なアガベの自生地も印象的です。アガベは乾燥地帯に生育するイメージがありますが、マナントラニコラはシダやランが生い茂る雲霧林の山岳地帯に生しています。 そこへ至る道には、大学関係者か消防署しか通行できない施錠されたゲートがあり、さらに行く手を阻む倒木をチェーンソーで何度も切り開きながら進んだというエピソードもあります。

現地は、数世紀前と変わらぬ暮らしを営む先住民の部族と出会うほどの、相当な秘境です。

マナントラニコラ(A. manantlanicola)。メキシコの雲に包まれた山岳地帯で近年発見された希少アガベ。

Shabomaniac!:植物のフォルムは、自生する環境が削り出したものなんです。だから、どんな場所に生えているかはすごく大事なんですよね。

ジェレミーがそこまでして過酷な自生地に行くのも、単に珍しい植物が見たいというだけでなく、その植物を生み出している環境や、過酷な自然の中に生きる野生アガベの圧倒的な存在感を受け止めたい、そしてそれを伝えたいからだと思います。

―― 自生地の環境を知ることで、植物への理解がさらに深まるのですね。

Shabomaniac!:自生地の姿を知ることは、栽培にも直結します。霧の立ちこめる雲霧帯のようなところに生えていたり、海岸で潮を浴びていたり、ガリガリに乾いた荒れ地に生えていたり。

この本には、ほとんどの種が自生地の写真と合わせて載っています。植物は工業製品ではありません。どんな環境で生き抜いてきたのか、地球が何百万年もかけてデザインしたプロセスを想像しながら育てると、園芸はぐっと面白くなりますよ。

禍々しいほどの魔力? 表紙を飾った「シャウィー」の凄み

―― Shabomaniac!さんの1枚は?

Shabomaniac!:表紙にもした「シャウィー」というアガベなんですが、日本ではそんなに広く育てられてるアガベじゃなくて、カリフォルニア半島の真ん中あたりに自生しています。同じ種とは思えないくらい、いろんな表現形態があるんです。表紙の個体はトゲだけでなく葉全体がうねって伸びていて、ちょっとモンスターみたいですよね。

無数の個体がひしめく広大な群生地で発見された、極めて希少なねじれ個体。

Shabomaniac!:実は表紙を決める時、出版社の方から「ちょっと禍々しすぎて一部の読者を弾くんじゃないか」という意見もあったそうです。モンスト化したこの造形が、背景の曇り空と相まってすごく魔力的な力がありそうとのことで。でも、僕らは満場一致で「絶対にこれだ!」と推しました。

dog.keeper:ジェフが「やっぱり日本はこういうの好きなんだね」と言っていました(笑)。

Shabomaniac!:ええ、日本の愛好家はうねるようなトゲの造形が大好きですから。この強烈な1枚が象徴するように、まだ誰も見たことのないアガベの深淵なる世界へ、ぜひ足を踏み入れてほしいですね。

【書誌情報】
『AGAVES アガベ』
著者:ジェレミー・スパス、ジェフ・ムーア
日本語版監修:Shabomaniac!
日本語版翻訳:dog.keeper


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世界的な名著『AGAVES』待望の日本語完訳版。全980点の写真と最新の分類・栽培法、自生地や文化的背景まで徹底解説。初心者からコレクターまで、一生モノの「アガベのバイブル」となる決定版です。

【日本語版監修者紹介】
Shabomaniac!

園芸家。サボテンや多肉植物の育成・研究を行い、「Habitat Style」を提唱。育成記録や自生地の旅をSNSで発信し、『Agave Complete アガベ 原種・名品図鑑』はじめ、多数の植物関連書籍を執筆。
ブログ:http://shabomaniac.blog13.fc2.com
Instagram:@shabomaniac

【日本語版翻訳者紹介】
dog.keeper

植物愛好家で進化生物学の研究にも取り組む。アガベやシダ植物などの魅力を、科学的な視点からSNSや執筆を通じて伝えている。
ブログ:https://note.com/dog_keeper
Instagram:@dog.keeper/

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