「商品があるのに買えない」!? 豊かな社会で起こる、資本主義の恐ろしい矛盾【眠れなくなるほど面白い 図解 資本論の話】

商品があふれても、豊かになれるわけではない

作れても売れるとは限らない

 市場には、食べ物も服も日用品も大量に並んでいます。けれども、商品があるからといって、すべての人の暮らしが満たされるわけではありません。明日の食べ物に困る人がいる一方で、売れ残る商品もあります。商品はある。必要としている人もいる。それでも、お金を払えなければ交換は成立しないのです。ここに、資本主義の矛盾があります。「豊富にモノがあるのに、それが必要な人の手に届かず、捨てられてしまうことすらある」という、恐ろしい矛盾です。

 商品は、市場に出され誰かに買われてはじめて、価値がお金として戻ってきます。売れなければ、商品は在庫として残り、価値は実現しないまま止まります。商品が作られすぎ、買う力が追いつかずに売れ残ることを「過剰生産」といいます。過剰生産によって売れ残りが増えると、企業は生産を減らします。生産が減れば、働く人の収入が減ったり、仕事が失われたりします。すると人びとはさらに商品を買いにくくなり、売れ残りが増えていきます。このように、売れないことが連鎖して社会全体に広がる危機を「恐慌」といいます

 世界大恐慌(1929年)や、リーマン・ショック(2008年)など、恐慌は歴史上何度も発生しています。商品が買われることを前提とした資本主義のサイクルは、簡単に崩壊してしまうときもあるのです。

資本主義が抱えている“矛盾”とは?

資本主義の社会では、利益を生むために商品をできるだけ多く、安く作ろうとする。しかし、作れば必ず売れるとはかぎらず、買う力が追いつかなければ、社会全体に危機が広がる。

過剰生産・恐慌のしくみ

過剰生産の背景と広がる影響

なぜ過剰生産が起こるのか?

  • 企業は利益を求めて生産を拡大する。
  • 機械化や分業の進歩により、少ない労働で大量生産が可能になる。
  • 他社との競争で、生産をやめると負けてしまう。

恐慌がもたらす影響

企業の損失・倒産
売れ残りや値下げで利益が出ず、工場の縮小や倒産が起こる。

失業の増加
仕事がなくなり、働く場を失う人が増える。

人びとの収入が減る
収入が減ることで、さらにモノが売れなくなる。

不況の長期化
不況が長く続き、社会全体が苦しくなる。


【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 資本論の話』監修:白井 聡

【監修者紹介】
白井 聡 (しらい・さとし)

政治学者、思想史家。1977年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。京都精華大学人文学部教員。レーニンの政治思想研究を出発点とし、現代日本社会や資本主義を鋭く読み解く論考で注目を集める。『永続敗戦論―戦後日本の核心―』(太田出版)で第35回石橋湛山賞、第12回角川財団学芸賞を受賞。主な著書に『国体論菊と星条旗』(集英社新書)、『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社)、『今を生きる思想マルクス生を呑み込む資本主義』(講談社現代新書)などがある。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 資本論の話』
監修:白井 聡


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