「やりがい」が報酬の一部に?「好きな仕事」ほど給料が低くなりやすい資本主義の仕組み【眠れなくなるほど面白い 図解 資本論の話】

〝好きな仕事〟では稼げない理由

憧れる人が多いと起こる不都合

 好きなことを仕事にできるのは、うれしいことです。毎日関われるだけで励みになり、つらい作業にも意味を見いだせるはず。だから、デザイン、ゲーム、出版、音楽、スポーツなど、趣味性のある仕事には多くの人が集まります。ただ、その魅力は、働く人にとって支えになる一方で、賃金を上げにくくする条件にもなります。

 やりたい人が多い仕事では、雇う側は高い賃金を出さなくても人を集めやすくなります。「経験になる」「好きなことができる」といったお金以外の価値が、報酬の一部のように扱われることもあります。すると、低い条件でも引き受ける人が出やすくなり、労働力の価格は押し上がりにくくなります。

 もちろん、好きな仕事を選ぶことが悪いわけではありません。好きだから続けられることもあり、その熱意が仕事を深める力にもなります。問題になるのは、その気持ちが「安くてもやるはず」と見なされるときです。やりがいや夢が、賃金の低さを受け入れさせる理由に変わるのです。「やりがい搾取」とはまさにこの論理で起こります。

 好きな仕事で稼ぎにくいのは、その仕事の価値が低いからではありません。魅力があるからこそ人が集まり、働きたい人が多いからこそ、条件が上がりにくくなる。好きという気持ちが、労働力を安く買われる理由にもなってしまうのです。

好きな仕事ほど、人が集まりやすい

好きなことを仕事にできるのは大きな魅力。しかし、その魅力によって働きたい人が集まると、雇う側は高い賃金を出さなくても人を集めやすくなる。

趣味性のある仕事


・好きだから続けたい。
・関われるだけでうれしい。
・経験になるなら挑戦したい。

人が集まりやすい理由

・やりたい人が多い
・好きなことが報酬の一部に見える
・経験や実績になる
・多少条件が悪くても受ける人がいる


魅力がある仕事ほど、労働力の供給が増えやすい。

好きな仕事は価値が低いのではなく、やりたい人が多い(資本側が労働力を選べる)ため、条件が上がりにくくなる。

「好き」が、安く買われる理由になることもある

好きな仕事を選ぶこと自体が悪いわけではない。問題は、その気持ちが「安くてもやるはず」と見なされるときに起こる。

働く側の気持ち

・好きだから頑張れる
・経験を積みたい
・夢に近づきたい
・断ると機会を失いそう

雇う側に起こること

・低い条件でも応募が来る
・報酬以外の魅力を提示できる(やりがい・経験・実績など)
・条件を上げなくても人を集めやすい
・労働力を安く買いやすい

好きであるほど断りにくくなり、やりがいや夢が、賃金の低さを受け入れさせる理由に変わることがある。


【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 資本論の話』監修:白井 聡

【監修者紹介】
白井 聡 (しらい・さとし)

政治学者、思想史家。1977年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。京都精華大学人文学部教員。レーニンの政治思想研究を出発点とし、現代日本社会や資本主義を鋭く読み解く論考で注目を集める。『永続敗戦論―戦後日本の核心―』(太田出版)で第35回石橋湛山賞、第12回角川財団学芸賞を受賞。主な著書に『国体論菊と星条旗』(集英社新書)、『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社)、『今を生きる思想マルクス生を呑み込む資本主義』(講談社現代新書)などがある。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 資本論の話』
監修:白井 聡


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