ハワイ移民の約40%が広島県出身!? サトウキビ農園で支えた人々の歴史【眠れなくなるほど面白い 図解 広島の話】

広島とハワイの深い関係

 記録上、初めてハワイ諸島に上陸した日本人の1人とされるのが、安芸国豊田郡木谷村(現・東広島市安芸津町)の出身の平原善松です。

 善松は、文化2年(1805)に、岩国藩の米を江戸に運ぶ船「稲若丸」の水夫として雇われ、翌年1月、江戸から帰る途中に遠州灘で遭難。岩国藩の役人2人と乗組員6人は、太平洋を2カ月以上漂流したのち米国の捕鯨船に救助され、同年5月にオアフ島に上陸しました。8人は、ハワイ国王の保護を受け3カ月ほど同地に滞在したのち、マカオ、広東、ジャカルタを経由して長崎に向かいましたが、途中で5人が病死。残る3人のうち2人も長崎入港直後に死亡し、故郷へ帰れたのは善松だけでした。しかし、善松もその翌年の文化5年(1808)に木谷村で病没しました。

 広島とハワイには、もう1つ、移民という深いつながりがあります。明治18年(1885)に始まったハワイへの官約移民において、広島県は約40%を占め、また、大正13年(1924)の統計では、ハワイ在住日本人の約26%が広島県出身者でした。特に広島市安佐北区仁保島村(現・南区仁保)は、多くのハワイ移民を輩出した地域として知られます。平成9年(1997)、広島県とハワイ州は友好提携を締結、令和6年(2024)には廿日市市とハワイ郡が姉妹都市提携を結ぶなど、その交流は現在も続いています。

ハワイの文化・経済に貢献した広島の人々

製糖工場と「ホレホレ節」

 明治18年から同27年(1894)の官約移民では、日本政府とハワイ王朝の協定により約3万人が、主にサトウキビ農園や製糖工場で働くために移住しました。移民一世は、サトウキビの植え付け、刈り取り、工場での製造作業などに従事。ハワイのサトウキビ畑で働いた日本人移民の労働唄「ホレホレ節」は、長時間労働、低賃金、炎天下の作業といった過酷な労働の中で、望郷の念や生活の苦難、労働の励ましなどを即興で歌ったものです。

【ハワイの製糖工場】
日本からハワイへの移民は、大正13年(1924)の排日移民法で終了するまで約22万人に達した。広島・山口県出身者が初期移民の多くを占め、特に沿岸部や島嶼部からの出稼ぎが多かった。

旧仁保島村のハワイ移民資料館

 かつて多くのハワイ移民を輩出した広島市南区仁保(旧・仁保島村)には、ハワイ移民の歴史を伝える私設博物館「ハワイ移民資料館 仁保島村」があります。館長の川崎壽氏が、自らの父がハワイ移民であったことをきっかけに設立した資料館で、ハワイ移民が現地から持ち帰った日用品や、当時の渡航に関わる公的書類など、ハワイ移民の生活や苦労を伝える貴重な資料を展示しています。


【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 広島の話』監修:佐々木卓也

【監修者情報】
佐々木卓也(ささき・たくや)

野外歴史地理学研究家。第35回広島文化賞受賞(平成26年度)。昭和29(1954) 年8月1日、広島市佐伯区生まれ。間学苑:時空人論研究所主宰、ひろしま歴史街道トリップ実行委員会座長、広島地名研究会事務局代表、石垣を讃える会代表世話人、棚田学会会員(元監事)、広島市内公民館活動団体指導員、中国新聞文化センター専属講師。広島県立広島観音高等学校卒業、奈良大学文学部地理学科卒業、広島大学大学院文学研究科研究生終了、京都大学教養部人文地理学教室研修員修了。国立呉工業高等専門学校・国立広島商船高等専門学校・国立大島商船高等専門学校・広島修道大学短期大学部講師を歴任。広島県史編纂室第三部会委員・広島市教育委員会調査委員・奈良広島両県町村史編纂委員を歴任。主著『芸備両国の条里遺構』(溪水社)、共著『広島県地名大辞典』(角川書店)、『日本地名基礎辞典』(日本文芸社)、『日本石造文化事典』(朝倉書店)ほか。専門は歴史地理学・地域民俗学・文化人類学・日本地名学ほか。趣味は歴史街道散策・石垣景観探訪・旅行企画策定など。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 広島の話』
監修:佐々木卓也


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