【横浜開港の歴史】「陸の孤島」から国際港へ!江戸幕府が神奈川宿ではなく「横浜村」を開港地に選んだ理由【眠れなくなるほど面白い 図解 神奈川の話】

江戸幕府が横浜を開港の地に選んだ理由とは?

「陸の孤島」から近代化の玄関口へ

 嘉永6年(1853)、米国のペリー提督率いる黒船艦隊が浦賀沖に現れ、開国と補給港の設置を要求しました。翌年、再び来航したペリーは横浜へ上陸し、幕府と「日米和親条約」を締結。このとき幕府は箱館(函館)と下田を開港しました。さらに安政5年(1858)、幕府は米国総領事ハリスの要請を受け「日米修好通商条約」を締結。5港の開港や江戸・大坂の開市が決定しました。当初、この条約では外国人が滞在・貿易できる開港場の1つとして神奈川が指定されていましたが、神奈川には宿場があり交通量が多いことや、江戸との距離が近いことから幕府が難色を示し、新たな候補地として「横浜村」が選ばれました。

 当時の横浜は家数約90軒、村高も350石余の小さな半農半漁の村で、後ろに入海、前は海という長い砂州の土地で、いわば「陸の孤島」だったため、幕府にとっては外国人と日本人とを遠ざける上で管理・制限がしやすいという利点がありました。また、横浜沖は水深があり海面も穏やかなため、大型船の沖での停泊にも適し、港へは艀などの小型船が往来をしていました。

 幕府は外国人が住む居留地を運上所(※)を中心として東側に造成し、また吉田橋には関門を設置、その内側を「関内」と呼びました

 こうして横浜は、日本の近代化における「欧米への玄関口」としての歴史を歩み始めました。

※運上所…いわゆる「税関」で、外交・貿易に関する業務を行った。現在の神奈川県庁の場所にあった。

「吉田新田」と「絹の道」

横浜と「絹」の深い関係

 開港後の横浜は日本最大の貿易拠点として急成長し、明治初期には国内貿易額の7〜8割を占めるほどになりました。当時の最大の輸出品は生糸で、幕末から明治時代にかけて、山梨などの産地から八王子を経由し、横浜へ輸出用の生糸を運ぶ輸送ルートは「絹の道(浜街道)」と呼ばれました。八王子鑓水から町田を経由するルートは現在、文化庁選定の「歴史の道百選」に選ばれています。

 絹の道の難所として知られた鑓水峠(東京都八王子市)にある「絹の道碑」。近くには「絹の道資料館(八木下要右衛門屋敷跡)」がある。

 山下公園に停泊する氷川丸。昭和5年(1930)に就航した氷川丸は、主にアメリカへの生糸輸出を担った。公園の近くには「シルク博物館」がある。

江戸時代初期の埋立事業「吉田新田」

 現在のJR関内駅の南西、横浜市中区・南区にまたがる地域には、かつて「吉田新田」がありました。江戸時代初期、明暦2年(1656)、江戸の商人・吉田勘兵衛が幕府の許可を得て入海を干拓、埋め立てて造成した大規模な新田で、寛文7年(1667)に完成しました。

 横浜開港時、この地域は港の背後地として、市街地を拡大するための土台となり、水路や運河により国際貿易港としての横浜の機能拡充を支えました。現在、南区の平楽・唐沢地区にかけて、その跡地や歴史的な町割りが残されています。


【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 神奈川の話』監修:神奈川県立歴史博物館 館長 望月一樹

【監修者紹介】
望月 一樹(もちづき・かずき)
神奈川県立歴史博物館館長。昭和36年(1961)横須賀生まれ、鎌倉育ち。駒澤大学文学部歴史学科を卒業後、神奈川県史資料の整理作業に携わり、昭和63年(1988)に川崎市市民ミュージアムの歴史担当の学芸員、その後学芸室長となる。平成29年(2017)に横浜にあるシルク博物館の学芸担当課長、平成30年(2018)からは神奈川県立歴史博物館の学芸部長に就任し、令和3年(2021)から現職。学生時代は日本古代史を研究していたが、学芸員になってからは江戸時代を中心に川崎をフィールドとして調査研究を行っている。共著に『博物館の仕事』(岩田書院)など。また「律令制下における橘樹郡の様相」(『史叢』95号)や「ペリー来航時における川崎沿岸地域の様相」(『川崎市文化財調査集録』54集)など論文も多数。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 神奈川の話』
監修:神奈川県立歴史博物館 館長 望月一樹


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