日本初の冷凍マグロ専用市場も開設!三崎港が世界中の上質なマグロを集め続ける背景【眠れなくなるほど面白い 図解 神奈川の話】

江戸の食文化を支えた「三崎まぐろ」

世界中のマグロが集まる三崎港

三浦市の三崎港で水揚げ・取引される「三崎まぐろ」の最大の特徴は、遠洋漁業で獲られた世界中の上質なマグロが、年間を通じて味わえる点にあります。

三崎まぐろとは特定の1種類のマグロを指すのではなく、クロマグロやミナミマグロ(インドマグロ)といった高級魚から、三崎でもっとも多く扱われるメバチマグロ、あっさりとした味わいのキハダマグロまで多岐にわたります。そして、仲買人による厳しい「目利き」を通ったものだけが、三崎まぐろとして流通します。

三崎は古くから漁業の町として栄え、江戸時代には紀伊半島などの漁師たちが移住してきたことで漁法が発達。当時から鮮魚や漬けのマグロが江戸へ運ばれていました。また、三崎漁港では江戸時代に日本初の「競り」が行われたとも伝わります。

明治時代末期には、沖合の城ヶ島が自然の防波堤となる天然の良港であることから、三崎はまぐろの遠洋漁業の拠点として急速に発展。昭和30年代(1955〜1964)に冷凍設備を持つ漁船が登場したことで、インド洋や南太平洋、大西洋などの遠方まで漁場が広がり、三崎は日本有数の遠洋漁業基地となりました。

近年、三崎港の水揚げ量は減少傾向にありますが、平成30年(2018)には日本初の冷凍マグロ専用の低温卸売市場が開設されるなど、地域全体でマグロの街としてのブランド強化に取り組んでいます。

「押送船」と「城ヶ島」

三崎港と押送船

江戸時代から明治時代にかけて、房総や相模、伊豆沿岸と江戸の間で鮮魚を運んだ高速の和船を「押送船」といいます。三崎港はこの船の重要な拠点であり、押送船によってマグロやカツオなどの海産物が江戸の魚河岸へと運ばれていました。

当時は、足が早くて価値が低いとされていたマグロも、押送船による素早い輸送が可能になったことで、江戸の食文化に欠かせない食材として普及。キハダマグロなら、押送船1艘で約2t(およそ50本)を運んだといわれています。

三崎港と城ヶ島

三崎港は、南に位置する城ヶ島が天然の防波堤となることで、古くから良港として機能してきました。三崎港と城ヶ島はわずか500mほどの距離で、両所で1つの港湾・漁業エリアを形成しています。

また、城ヶ島は東京湾の入り口に位置することから海防や海からの目印としても重視され、江戸時代から奉行所や番所が置かれ、幕末には灯台建設が計画されました。

なお、城ヶ島は海底に堆積した火山噴出物がフィリピン海プレートに乗って北上し、本州に衝突して隆起した島で、長年の波による浸食で形成された断崖絶壁や海蝕洞穴など、独特の景観が数多く見られます。

【三崎のまぐろ丼】
世界中の海で獲れた新鮮なマグロが三崎港に集まるため、年間を通しておいしいマグロが味わえる。近年は、地元の町おこし団体「三浦中華料理研究会」が開発した地元グルメ「三崎まぐろラーメン」も人気。

【城ヶ島と三崎港】
城ヶ島は、巨大な天然岩のアーチ「馬の背洞門」や、高い壁のようにそそり立つ海食崖が続く「赤羽根海岸」などの絶景を楽しめる観光地として知られる。


【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 神奈川の話』監修:神奈川県立歴史博物館 館長 望月一樹

【監修者紹介】
望月 一樹(もちづき・かずき)
神奈川県立歴史博物館館長。昭和36年(1961)横須賀生まれ、鎌倉育ち。駒澤大学文学部歴史学科を卒業後、神奈川県史資料の整理作業に携わり、昭和63年(1988)に川崎市市民ミュージアムの歴史担当の学芸員、その後学芸室長となる。平成29年(2017)に横浜にあるシルク博物館の学芸担当課長、平成30年(2018)からは神奈川県立歴史博物館の学芸部長に就任し、令和3年(2021)から現職。学生時代は日本古代史を研究していたが、学芸員になってからは江戸時代を中心に川崎をフィールドとして調査研究を行っている。共著に『博物館の仕事』(岩田書院)など。また「律令制下における橘樹郡の様相」(『史叢』95号)や「ペリー来航時における川崎沿岸地域の様相」(『川崎市文化財調査集録』54集)など論文も多数。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 神奈川の話』
監修:神奈川県立歴史博物館 館長 望月一樹


【Amazonで購入する】

とにかく広く、場所ごとにさまざまな面白さにあふれている神奈川。
観光、流行の発信地、デートスポットとしても人気の「横浜」をはじめ、「鎌倉・逗子」「横須賀」「箱根」などの多様な地理および歴史、さらに「相模原」「川崎」の大規模な政令指定都市(横浜を加えた3都市は全国で唯一)など、多彩な文化も魅力です。また、様々な分野において「日本初」「最古」「発祥の地」が多いことも特徴的です。
本書では、ガイドブックでは教えてくれない、地元民でも意外に知られていない「神奈川県」の文化、自然、歴史、食、交通、また隠れた興味深い事実まで、専門家がわかりやすく解説します。

この記事のCategory

求人情報

インフォテキストが入ります