なぜ給料は生活費で消えるのか?『資本論』から見る賃金と生活維持費の関係【眠れなくなるほど面白い 図解 資本論の話】

社会の不条理とギモンは『資本論』で説明できる

私たちの働く時間は、私たちの生きる糧になるだけではなく商品や利益を生み出す力になります。賃金だけでは見えにくい労働の意味を、『資本論』の視点から考えていきます。


会社からの給料は、労働者が働き続けられるための生活費

また明日も働くために使われる給料

 誰もが待ち遠しいはずの給料日。けれども、家賃、食費、光熱費、通信費、交通費を払っていくと、手元に残るお金は思ったほど多くありません。働いて得た給料が、暮らしを整え、体を休め、また次の仕事へ向かうために使われていく。その流れに、なかなか余裕が増えない感覚を抱く人もいるはずです。

 資本主義社会で会社が買っているのは、人間そのものではなく、一定時間働くことができる労働力。賃金は、その労働力という商品を買った対価として支払われるものですが、働けば体力を使い、集中力を使い、時間も使います。だから、食べる、眠る、住む、休む、通勤する、必要な知識を身につけるといった生活が欠かせません。ここに、労働で得た賃金が使われていきます

 働く力を日々保ち、もう一度仕事に向かえる状態に戻すことを、「労働力の再生産」と呼びます。そして、労働力の再生産を行うためにも、せっかく得た賃金で商品を買わなければならないのです。給料は、労働力商品の交換価値の実現であると同時に、生活を維持し、働く力を支える費用という面も持っています。

 給料は労働者が明日も働ける体と暮らしを支えるために支払われている。そう見ると、給料が生活費に消えていく感覚も、資本主義の労働のしくみとして理解できます。

給料は、生活を維持するために使われる

給料は自由に使えるお金に見える。しかし多くは、住む・食べる・休む・通勤するなど、働き続けるための生活費に回っていく。しかし、実際は暮らすためにかかるお金がほとんどで自由に使えるお金はわずか。

給料は、暮らしを支えるお金であるため、自由に使える部分は想像以上に少ない。

労働力は、毎日の生活で再生産される

会社が買っているのは、人間そのものではなく「労働力」。その労働力を使い続けるには、食べる、眠る、住む、休むといった生活が必要になる。

労働力の再生産 : 働く力を日々保ち、もう一度仕事に向かえる状態に戻すこと。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 資本論の話』監修:白井 聡

【監修者紹介】
白井 聡 (しらい・さとし)

政治学者、思想史家。1977年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。京都精華大学人文学部教員。レーニンの政治思想研究を出発点とし、現代日本社会や資本主義を鋭く読み解く論考で注目を集める。『永続敗戦論―戦後日本の核心―』(太田出版)で第35回石橋湛山賞、第12回角川財団学芸賞を受賞。主な著書に『国体論菊と星条旗』(集英社新書)、『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社)、『今を生きる思想マルクス生を呑み込む資本主義』(講談社現代新書)などがある。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 資本論の話』
監修:白井 聡


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「AIで便利になったはずなのに、どうして働き方はラクにならない?」
「なぜ一部の人だけが、どんどんお金持ちになっていく?」
「“社会に必要な仕事”ほど給料が上がらないのはなぜ?」

そんな“現代社会の違和感”を、150年以上前に見抜いていた本――それがマルクスの『資本論』です。

本書は、難解な古典として知られる『資本論』を、「現代社会を読み解く」視点で、図解でわかりやすく解説した一冊です。
「資本主義とはそもそも何か?」から始まり、「会社はどうやって利益を生み出しているのか」「なぜ効率化しても仕事は減らないのか」「なぜ毎年数字に追われるのか」まで、私たちの日常と結びつけながら読み解きます。
剰余価値、労働力商品、資本の増殖といった『資本論』の重要キーワードも、図解だからスッキリ理解!

さらに本書では、“働き方”だけでなく、“欲望”や“価値観”までもが資本主義に組み込まれている現代社会の姿にも迫ります。
「好き」が消費に変わる仕組み、「何かしなくちゃ」と焦る休日――。
私たちの心や感情までが「資本」に回収されていく構造が、『資本論』を通して見えてきます。

『資本論』は、単なる「お金の本」ではありません。
“なぜ今の社会はこうなっているのか”を理解するための本です。

この本を読めば、あらゆる議論の見え方も、働くことへの感覚も、そして自分の感情の見え方もきっと変わります。

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