唯一無二の馬券師・弥永明郎『伝授』最終回:若手騎手や調教師の成績差は「騎乗技術や調教技術以外によるところも大きい」ことについて伝授

 約2年に渡って、この「伝授」で俺なりの競馬論を伝えてきたが、今回で最後になる。ラストは競馬界の将来を担う若手騎手や調教師の成績格差がなぜ生まれるかについて書いてみようと思う。

若手騎手の成績差、騎乗馬の質の差はなぜ生まれるのか?

 何十年も競馬に携わって、色んな騎手をデビューから見てきたけれど、騎手の上手い下手なんて分からないよ。多くの競馬評論家は「自分の好み+成績」で誰々は上手いとか言っているだけ。

 ただ、矢作芳人厩舎や杉山晴紀厩舎には良い馬が入るから、その矢作厩舎に所属している坂井瑠星のような若手には、もちろん本人の努力もあって良い馬が回ってきて評判馬に乗ることができるのは事実。当然、他の同年代の騎手よりチャンスが増えるわけだ。そういうチャンスの差が、勝ち鞍の差に繋がっていくことになる。

フォーエバーヤングなど一線級のお手馬が多い坂井瑠星騎手


 強い馬に乗っていれば自信が出るし、ミスをしてもそれ以上に結果を出していれば許してもらえる。ルメールだって1番人気をしょっちゅう飛ばしているし、ミスすることだってある。それでもルメールの評価は高いままだろ?

 俺の持論では『騎手が上手いから勝つ』のではなく、『上手く展開が噛み合ったから勝つ』『たまたま運が良かったから勝つ』のが競馬だよ。

調教師の成績は走る馬を仕入れられるかが9割

 特まう。騎手と同様に、調教師にも腕の差はほとんどないと思っている。どの調教師の調教が良いかなんて分からないし、良いやり方があればみんなそれを真似すればいいだけだ。
 20~30年前に藤沢和雄先生が『香港で新しい調教パターンがある』と言っていたけれど、それを取り入れたからといって劇的に馬が変わるわけじゃない。筆記試験に受かって調教師になった人間が今までのやり方を継承して多少のアレンジを加えてやっているだけなんだから大差はないよ。

 それでも成績には大きな差がつく。それは結局のところ「走る馬を仕入れられるかどうか」そして「馬主に強そうな馬を預託して欲しいと頼めるいい意味での図々しい気性を持っているか」どうかで差が出てくるんだ。これを軌道に乗せられるとリーディング上位の常連になれる。

 また、ノーザンファーム系や社台系のクラブ馬が入ってくるかどうかも成績に直結する。ノーザンや社台の牧場で働いたり、研修を積んだりして調教師になった人間は、最初から強い繋がりがあるから良い馬が入る傾向にある。
 例えば高野友和先生、木村哲也先生、安田翔伍先生などはノーザン・社台で働いた経験があるから、そういうところには当然ノーザンや社台の馬が入る可能性が高い。

 馬主だって、何千万円・何億円も出して買った馬は実績のある厩舎に預けたがるのは当たり前だ。逆に100万円の馬はなかなか預かってもくれないし、預けるのも失礼だと思っちゃうだろう。
 高いから必ず走るわけではないけれど、やっぱり高い馬のほうが走る確率は高い。なので、入ってくる馬の値段の格差によって成績の差がどんどん開いていく構造になっている。

 さて、長きに渡りこのコラムを読んでくれたみんなには感謝している。馬券成績が良くなったかは分からないが、競馬を楽しむ引き出しは増えたのではないだろうか。
 最後に言っておくが、競馬新聞に答えは書いてないからな。これが俺からの最後の伝授。これを踏まえたうえで、それぞれの予想スタンスで競馬を楽しみ続けてくれたら幸いだ。

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