かつて主婦はシャーマンの役割を担っていた!? 民俗学から学ぶ「女性・子ども・老人」の呪術的な役割とは【眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話】

【「日本民俗学」の基礎知識】女性・子ども・老人が担った役割

異界に近い、特別な力を持つ存在

日本の民俗において、女性・子ども・老人は、共同体を構成する存在であると同時に、異界に近い特別な力を持つ存在として位置づけられていました。

女性の「出産」という能力は、大地が作物を見出す「豊穣」の力と同一視されてきました。たとえば、田植えを行う「早乙女」は、単なる労働力ではなく、稲魂(稲の霊魂)を奮い立たせる呪術的な役割を担っていました。また、沖縄の「ユタ」や東北の「イタコ」のように、死者やカミの言葉を伝える巫女的役割を担うのは主に女性であり、また、かつて各家庭の祭祀を司ることは、主婦の重要な役割でした。

一方、乳幼児の死亡率が高かった時代には、「7歳までは神のうち」という言葉どおり、幼い子どもはまだこの世に完全に定着しておらず、カミからの預かりものと考えられていました。祭礼などで稚児がカミの使いとして重要な役割を果たすのは、こうした考えが反映されたものです。

老人は、共同体の規範や祭祀の作法、口承文芸などを次世代に伝えるなどの重要な役割を担う一方で、死(異界)に近い存在として、畏怖と敬意の対象とされていました。年老いることはカミに近づく過程とされ、祭りなどの儀礼では老人の姿をした「翁」が、長寿や豊作などを司る存在として扱われることもあります。

女性・子ども・老人の役割

女性

「主婦」は、家庭を守り食物の豊穣を祈る、家の中の司祭としての側面を持っていた。また、女性は、カミの言葉を聞いたり、死者の声を伝えたりするシャーマンの役割を担う場合も多かった。

子ども

かつては、7歳ころまでの子どもは霊魂が抜けやすく、死ぬことはカミのもとに帰ることと捉えられていた。現代の七五三のような成長を祝う行事は、霊力や霊魂を補強する儀礼として行われた。

老人

この世とあの世の境界に位置する老人は、生活の知恵や儀礼の作法、言い伝えなどを次世代に伝える「生き字引」であると同時に、ときにカミに近い存在として敬われた。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話』監修:島村恭則

【監修者紹介】
島村恭則(しまむら・たかのり)
民俗学者。関西学院大学社会学部長・教授。1967(昭和42)年、東京都生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得退学。文学博士(筑波大学)。国立歴史民俗博物館教官、韓国・翰林大学校客員教授、東京大学客員教授などを歴任。日本各地で民俗学調査を行うとともに、韓国・中国での調査・研究も行う。
近年は、世界民俗学史をふまえた民俗学理論の研究、とくに民俗学を国際的・学際的な「ヴァナキュラー文化研究」として再編成する議論を展開している。
著書に『みんなの民俗学 ヴァナキュラーってなんだ?』(平凡社)、『民俗学を生きる ヴァナキュラー研究への道』(晃洋書房)、『これからの時代を生き抜くための民俗学入門』(辰巳出版)、『昔話の民俗学入門 民間伝承の秘密を読み解く』(創元社)、編著に『現代民俗学入門 身近な風習の秘密を解き明かす』(創元社)などがある。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話』
監修:島村恭則


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