【コラム】落日の韓国代表 大統領まで批判【二宮清純 スポーツの嵐】

スポーツの批判はスポーツの内に…

 世界で一番強い国(地域)を決めるサッカーW杯は、国民が熱狂するゆえに、為政者はしばしば国威発揚の“燃料”として利用する。

 そのため、FIFAは加盟協会に対し、「政治および宗教に関する事柄において中立を保つ」(規約の第15条a)ことを求めている。

 そうしたことなど、一切お構いなしだ。韓国のイ・ジェミョン大統領は自らのSNSで、燃料どころか爆弾を投下した。

「予想外の結果に、戸惑いを超えて呆れている」

「能力よりも身内意識を重視し、無能な人物を指揮官に選べば、その結果は火を見るよりも明らかだ」

 さらには、こんな言葉も。

「W杯出場にも多くの国民の血税と国家的支援能力が投入されている」

 大統領から集中砲火を浴びせられたのはホン・ミョンボ代表監督。1次リーグ敗退が決まった直後に記者会見を開き、辞任を表明した。

 大会前、指揮官は北中米大会での目標を「ベスト8」に置いていた。ソン・フンミン(LAFC)、キム・ミンジェ(バイエルン・ミュンヘン)、イ・ガンイン(パリ・サンジェルマン)ら、欧州のビッグクラブで活躍する、あるいは活躍してきた選手が中核をなすチームは、国民から大きな期待を集めていた。

 ところが結果は1勝2敗。1次リーグ突破をかけた南アフリカ戦は、格下ゆえ最低でも勝ち点1(引き分け)を見込んでいたが、敵の堅守を崩せず0対1。主将でもあるソン・フンミンを先発から外したことが        物議をかもした。

 しかし、だからと言って帰国した監督や選手たちに向かって「死ね!」「帰れ!」「恥さらし!」はないだろう。それを大統領が諫めるのならともかく、率先してののしっているのだから始末に終えない。

 もっとも日本においても、過去にファンの暴走がなかったわけではない。初めてW杯に出場した98年フランス大会、3戦全敗に終わり、成田空港に帰国した選手たちに対し、痛烈なヤジが浴びせられた。岡田武史監督が「FWの柱」と位置付けながら精彩を欠いた城彰二には、生タマゴがぶつけられた。

 しかし、さすがに首相や大臣が、傷心の監督や選手たちに罵詈雑言を浴びせたという話は寡聞にして知らない。

 韓国は、日本にとって長きに渡り切磋琢磨してきたライバル国だ。1950年代から90年代にかけて、日本は韓国の後塵を拝してきた。

 だが、それも、もう過去の話だ。お隣の国の出来事とはいえ、ピッチ外の醜聞は、あまりにも寂しい。

初出=週刊漫画ゴラク7月17日発売号

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