言葉と行動のズレが人間らしさを生む!プロの編集者が教える小説のセリフに奥行きを出す方法

\編集者の心をつかむ 人物・情景・心理の文章表現技法/

セリフの裏にある本心を行動で示す

言葉と行動にズレが生まれた瞬間、人物は平面から立ち上がります。あえてのズレが、人間らしさをもたらすのです。

POINT

  • セリフは本心とあえてズラしてみる
  • 行動で裏の感情を補う
  • 行動と感情の“矛盾”が人間らしさを生む

セリフに矛盾を含ませて人物にリアリティを出す

 編集者が会話文で注目するのは、セリフのうまさだけでなく、人物の奥行きです。現実の人間は、考えていることと口にする言葉がつねに一致しているわけではありません。そのズレが感じられるかどうかで、キャラクターの生々しさが決まります。

 感情をつねにセリフで説明しすぎると、読み取る余白が生まれません。反対に、「平気だよ」といいながら目をそらす、「行けよ」と促しつつ拳が震える――行動や仕草に矛盾を残すことで、セリフの裏にある不安や怖れといった感情がにじみます。こういった感情とセリフのズレが、性質や状況に根ざしていれば、キャラクターは“人間らしく”立体切になるでしょう

 会話は情報伝達ではなく、心理表現の場でもあります。この不一致を、場面を選んで効果的に使うことで、読者は人物のリアリティに心打たれるのです。

人間らしい矛盾がときに読者の心をつかむ

NGな例

「あなたは悲しくないの? もう会えないのよ」
涙目で訊いてくる彼女に感情を揺さぶられて涙があふれる。
「か、悲しいに決まってるだろ――」
心が張り裂けそうなほど辛くて、もう何も言葉にならなかった。

① 会話と説明文が相互にリンクしすぎていて読者の心に刺さらない
② 感動させようと筆が力むほど展開があざとく感じられてしまう

次が予測できる流れは“人間らしさ”より“作り物”感を抱かせます。リアルな心理は正反対の言動に表れる場合も視野に入れましょう。

OKな例

「あなたは悲しくないの? もう会えないのよ」
涙目で訊いてくる彼女に、僕は笑って言葉を返す。
「全然。だってケンカばっかりしてたの、知ってるじゃないか」
次の瞬間、声が詰まった。目の前の世界がじわりとにじんで霞む。

① 涙に対して笑って返す展開が違和感として読者を惹きつける
② 言葉とは裏腹に、瞬時に逆転する感情が“人間らしさ”を強調

あえて無理したり強がったりする人の心の矛盾を的確に捉えれば、キャラの人格が浮き彫りとなって印象的なシーンを盛り上げます。

 【出典】『プロの編集者&小説家が教える クリエイターのための賞を勝ち獲る小説の書き方』著:秀島迅/監修:Nola編集部/イラスト:真崎なこ

【著者紹介】
秀島迅
青山学院大学経済学部卒。2015年、応募総数日本一の電撃小説大賞(KADOKAWA)から選出され、『さよなら、君のいない海』で単行本デビュー。小説家として文芸誌に執筆活動をしながら、芸能人や著名人のインタビュー、著述書、自伝などの執筆も行なっている。近著に長編青春小説『その一秒先を信じて シロの篇/アカの篇』二作同時発売(講談社)、語彙力図鑑シリーズなど著書多数。また、コピーライターや映像作家としての顔も持ち、企業CM制作を現在も月10本以上手がけている。

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【書誌情報】
『プロの編集者&小説家が教える クリエイターのための賞を勝ち獲る小説の書き方』
著:秀島迅/監修:Nola編集部/イラスト:真崎なこ


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