会社が優位に立つ労働市場のからくり!マルクスが働けていない人びとを「産業予備軍」と呼んだワケ【眠れなくなるほど面白い 図解 資本論の話】

失業者が増えるほど、資本家にとって好都合

労働者の立場を低くする不安定雇用

「代わりはいくらでもいる」。はっきりそう言われなくても、職場でそう感じる場面はあります。AIや機械に仕事の一部が置き換えられ、非正規や短時間の働き方も広がる。働きたい人が多く、仕事の枠が限られていると、条件に不満があっても強く言いにくくなります。

 マルクスは、失業者や十分に働けていない人びとを「産業予備軍」と呼びました。これは、悪いのが失業者だという意味ではありません。働きたいのに仕事に就けない人、安定した仕事を探している人がいる状態が、資本にとって利用しやすい労働力の控えになる、という見方です。必要なときに雇える人がいるほど、会社側は条件を強く引き上げなくても人を集めやすくなります

 その影響は、いま働いている人にも及びます。「辞めても代わりがいる」「条件が悪くても応募者はいる」と見なされれば、賃金や労働条件は上がりにくくなります。機械化やAI化で置き換え可能な仕事が増えるほど、この圧力はさらに強まります。労働者の交渉力はまわりにどれだけ働きたい人がいるかにも左右されるのです。

 失業者が増えるほど資本に有利に働くというのは、冷たい現実です。失業や不安定雇用は、当事者だけの問題ではありません。働く人全体に「代わりがいる」という圧力をかけ、賃金を抑える力にもなるのです。

働きたい人が多い社会は資本に有利

失業者や不安定な働き方の人が増えると、会社にとっては必要なときに雇える人が多い状態になる。

働きたい人が多い状態

  • 失業している人
  • 安定した仕事を探す人
  • 非正規で働く人
  • 短時間しか働けていない人

働きたいのに十分な仕事に就けない人がいると、労働市場には「控えの働き手」が多くなる。

会社にとって起こること

  • 応募者を集めやすい
  • 必要なときに雇いやすい
  • 条件を上げなくても人が来る
  • 人手不足を埋めやすい

働きたい人が多いほど、会社(資本)はよい条件を出さなくても労働力を確保しやすくなる。

失業者や不安定雇用の人びとは、資本にとって「必要なときに使える労働力の控え」になりやすい。


「代わりがいる」状態は、働く人に圧力をかける

働きたい人が多く、仕事の枠が限られていると、いま働いている人も条件に不満を言いにくくなる。

産業予備軍

  • 仕事を探している人
  • もっと安定して働きたい人
  • 条件が悪くても応募する人
  • 置き換え可能な働き手

資本にとって、いつでも雇える労働力の控えになる人びと。

働く人への圧力

  • 辞めても代わりがいる
  • 賃金が上がりにくい
  • 条件交渉をしにくい
  • 不安定な雇用を受け入れやすい

まわりに働きたい人が多いほど、いま働く人の交渉力も弱まりやすい。

失業や不安定雇用は当事者だけの問題ではなく、
働く人全体に「代わりがいる」という圧力をかける。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 資本論の話』監修:白井 聡

【監修者紹介】
白井 聡 (しらい・さとし)

政治学者、思想史家。1977年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。京都精華大学人文学部教員。レーニンの政治思想研究を出発点とし、現代日本社会や資本主義を鋭く読み解く論考で注目を集める。『永続敗戦論―戦後日本の核心―』(太田出版)で第35回石橋湛山賞、第12回角川財団学芸賞を受賞。主な著書に『国体論菊と星条旗』(集英社新書)、『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社)、『今を生きる思想マルクス生を呑み込む資本主義』(講談社現代新書)などがある。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 資本論の話』
監修:白井 聡


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『資本論』は、単なる「お金の本」ではありません。
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