「子どもの不安」は性格のせいではない?「ポリヴェーガル理論」で紐解く自律神経と心身の仕組み

子どもの不安に寄り添う「ポリヴェーガル理論」

 子どもが不安そうにしていると、近くにいるおとなは「すぐにクヨクヨするから困ったものだ」「心配しすぎなんじゃないか」と感じてしまいがちです。でも、不安になるのは性格のせいではありません。心と体を危険から守るために、さまざまな神経が頑張った結果なのです。


ポリヴェーガル理論とは?

 わたしたちの全身に張り巡らされている自律神経は、呼吸や体温、血圧など、人が生きるために欠かせない活動を休みなく調整しています。ストレスや環境の変化などで心身に負荷がかかったときも、自律神経は細やかにからだのメンテナンスを行い、一定の状態をキープしてくれるのです。

 自律神経は「交感神経」と「副交感神経」に分かれており、交感神経は興奮と緊張を促す働きを、副交感神経は興奮・緊張を抑え、リラックスする働きを担っています。車にたとえるなら、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキのようなもの。交感神経がほどよく働いていると、人は心地よいドキドキやワクワクを感じ、副交感神経がほどよく働いていると、人は安心を感じおだやかな気分になります。

 一方で、自律神経が働きすぎると人は不安になります。交感神経が働きすぎると、イライラして怒り出したり、パニックになったり。副交感神経が働きすぎると、凍りついて動けなくなったり、引きこもってしまったりします。

自律神経を3つに分けた最新の神経理論

 1994年にステファン・W・ポージェス博士が提唱した「ポリヴェーガル理論」は、神経科学の最新理論として年々発展し、現在ではストレス緩和やトラウマケアなどに役立てられています。

 この理論のユニークなところは、交感神経と副交感神経のうち、副交感神経をさらに「背側迷走神経」と「腹側迷走神経」の2つに分けた点です。つまり、人の心身の反応や状態を、3つの自律神経という観点で捉えているのです。

 ポリヴェーガルとは、多重を意味するPolyと迷走神経を意味するVagalを組み合わせた言葉です。それまで副交感神経の大半を占める迷走神経は、ひとつの働きをすると考えられていましたが、じつは多様な働きがあったという考え方からこの名前がつけられました。

 ポージェス博士は哺乳類が「つながり」を育む生物であることに着目し、ほ乳類特有のその機能と自律神経の関係を研究するなかで、腹側迷走神経が働くと誰かとつながり、心身が好ましい状態に整うという点に注目しました。

 本書ではポリヴェーガル理論をもとに、3つの自律神経がどのような役割を持ち、それらの働き方が心身にどんな影響をもたらすかを、わかりやすく解説しています。自律神経の観点から、今の子どもの状態を見つめ直し、声がけやワークなどによって不安と共にありながらも乗り越えられるよう手助けしていく。それこそが、本書で目指すゴールとなります。

イラスト:なか

 3つの自律神経はそれぞれが重要な役割をもっています。自律神経の働きにより、緊張や不安、リラックスを繰り返すことで、わたしたちは日々を送っているのです。

3つの自律神経に「いい・悪い」の序列はない

 ここまで読んで、「交感神経と背側迷走神経はあまりよくない神経で、腹側迷走神経は大切な神経だ」と考えた方もいらっしゃるかもしれません。でも、3つの自律神経に「いい・悪い」はなく、そのどれもがわたしたちの心身を守るために、懸命にサポートしてくれているのです。

 アクセル役の交感神経は、身に危険が迫ったとき、「戦う」もしくは「逃げる」ことで危険をまぬがれようとします。そこで戦っても逃げてもダメとなると、背側迷走神経が急ブレーキをかけて心身をシャットダウンさせます。そうすることで、体内を極度の温存状態にし、安全・安心を確認できたらまた動き出すのです。そう聞くと、自律神経はじつによくできていると思いませんか?

 ひとたび危険を察知すると、交感神経と背側迷走神経はサバイバルのために全力で働き始めますが、ほどよく働いているときは心地いいドキドキやリラックスをもたらしてくれます。

 そして、誰かとつながることで安心感や楽しさをもたらす腹側迷走神経は、背側迷走神経のひとりでの休息の時間によるメンテナンスがなければ、十分に働くことができません。

 3つの自律神経はそれぞれが大切な役割を持つ存在です。それぞれの働きが緊張と不安、適度な覚醒やリラックスをもたらすことで、わたしたちは毎日を生きることができるのです。

ポリヴェーガル理論で
子どもを見守る視点が変わる/イラスト:なか
イラスト:なか

【出典】『「不安ぐせ」のある子と「だいじょうぶ」を育む ポリヴェーガル理論』著:浅井咲子 / イラスト:なか

【著者紹介】
浅井 咲子
公認心理師、神経セラピスト。立教大学卒業後、外務省在外公館派遣員として在英国日本国大使館勤務。その後、米国ジョン・F・ケネディ大学院にて、カウンセリング心理学の修士課程(身体心理学専攻)を修了。オークランドの地域カウンセリングセンターにて研修を行う。帰国後、教育センターや企業内で相談員として勤務。2008 年、セラピールーム「アート・オブ・セラピー」を設立し、自己調整とレジリエンスのある生活を提案し続けている。
著書に『今度こそ「不安ぐせ」をゆるめるポリヴェーガル理論』(日本文芸社)、『不安・イライラがスッと消え去る「安心のタネ」の育て方』(大和出版)、『「今ここ」神経系エクササイズ』『「いごこち」神経系アプローチ』(梨の木舎)、翻訳書に『子どものトラウマ・セラピー』『トラウマによる解離からの回復』(国書刊行会)、『レジリエンスを育む』『発達性トラウマ治癒のための実践ガイド』(岩崎学術出版社)など。
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ブログ: https://ameblo.jp/artoftherapy/
HP「ART of therapy」: https://assakijp.wixsite.com/artoftherapy/profile

【書誌情報】
『「不安ぐせ」のある子と「だいじょうぶ」を育む ポリヴェーガル理論』
著:浅井咲子 / イラスト:なか


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3つの自律神経を味方につけて
〈不安ぐせ〉を〈安心習慣〉に変える!

いつも不安にふりまわされて、
シクシク、くよくよ、イライラ……
「うちの子、もしかして不安になりやすい?」
「人より繊細なのかな?」と思ったら
ぜひ本書の「ポリヴェーガル理論」にもとづくワークを試してみてください。

ポリヴェーガル理論は、ステファン・ポージェス博士が提唱した神経理論で、
自律神経を「交感神経」と「2つの副交感神経(背側迷走神経・腹側迷走神経)」の3つとして捉えます。

・人の表情や声色、変化によく気がつく
・大事なイベントの前にネガティブなイメージをしがち
・登園時、登校時はこれから過ごす時間を考えて泣いてしまう
・にぎやかな人の近くにいると、いつもイライラ
こうした「不安ぐせ」は性格から生まれるものではなく、
心と体を守ろうとする安全システムが働くことで生まれるもの。

本書では、ポリヴェーガル理論にもとづき、
子どもの「不安ぐせ」のしくみをやさしく解説しながら、
親子でできるシンプルなワークを紹介します。

不安やストレスを感じても
「わたしは大丈夫」「なんとかなる」と思える力――“レジリエンス”を、子どもと一緒に育てていきます。
がんばって変えようとしなくて大丈夫。
安心は、親子の関わりのなかで、少しずつ育っていきます。

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