人手不足なのに、なぜ給料は上がらない? スキマバイト・シニア雇用が増えると起こること【眠れなくなるほど面白い 図解 資本論の話】

\社会の不条理とギモンは『資本論』で説明できる/

スキマバイトやシニア雇用……労働力が増えるとどう影響する?

働き手が増えるほど待遇は低下

 スキマバイトやシニア雇用が広がると、働く側には選択肢が増えたように見えます。空いた時間を使えて、年齢に関係なく働ける。こうした面は、たしかに助けになります。けれども労働市場全体で見ると、働ける人の入り口が広がることは、会社が集められる労働力を増やすことにもなります。

 会社にとっては、必要な時間に、必要な人数だけ働いてもらえるほど都合がよくなります。週に数時間だけ働ける人、繁忙期だけ入れる人、定年後も働ける人が増えれば、人手不足の穴を細かく埋められます。すると、賃金を大きく上げなくても人を集めやすくなり、待遇改善への圧力は弱まりやすくなります。

 ここで起きているのは、働き方の多様化が、労働力の供給を厚くするということです。同じ仕事をしたい人が多ければ、働く側は強く交渉しにくくなります。条件が合わなければ、別の人に頼める。そう見なされるほど、労働力は安く、細かく、必要な分だけ使われやすくなります。

 もちろん、スキマバイトやシニア雇用そのものが悪いわけではありません。問題は、働く自由が広がる一方で、資本の側にも「使いやすい労働力」を増やす自由が生まれることです。労働力が増えるほど、賃金は上がりにくくなる。この二面性を見落とすと、働き方の自由は、いつの間にか安く使われる柔軟さに変わってしまいます。

働き方が広がると、働く側には選択肢が増える

スキマバイトや副業、シニア雇用は、働く人にとって助けになる面がある。空いた時間を使い、年齢に関係なく働き、家計を補うことができる。

広がる働き方

  • スキマバイト
  • 副業
  • シニア雇用
  • 短時間勤務
  • 繁忙期だけの仕事

少しだけ働ける人や、必要な時期だけ働ける人も、労働市場に入りやすくなる。

働く側に見えるメリット

  • 空いた時間を使える
  • 副業で収入を増やせる
  • 年齢に関係なく働ける
  • 家計を補える

働き方の入り口が増えることで、自分の状況に合わせて働きやすくなる。

➡働き方の多様化は、働く人にとって選択肢を増やす面がある。

労働力が増えると待遇は上がりにくくなる

労働市場全体で見ると、働ける人の入り口が広がることは、会社が集められる労働力を増やすことにもなる。

会社にとって都合がよいこと

  • 必要な時間だけ雇える
  • 繁忙期だけ人を増やせる
  • 人手不足を細かく埋められる
  • 賃金を大きく上げなくても人が集まりやすい

働ける人が多いほど、会社は必要な分だけ労働力を確保しやすくなる。

働く側に起こりうること

  • 賃金が上がりにくい
  • 待遇改善の圧力が弱まる
  • 条件交渉をしにくい
  • 安く、細かく使われやすい

同じ仕事をしたい人が多いほど、働く側は強く交渉しにくくなる。

働き方の自由は、条件を守るしくみがなければ、安く使われる柔軟さに変わってしまう。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 資本論の話』監修:白井 聡

【監修者紹介】
白井 聡 (しらい・さとし)

政治学者、思想史家。1977年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。京都精華大学人文学部教員。レーニンの政治思想研究を出発点とし、現代日本社会や資本主義を鋭く読み解く論考で注目を集める。『永続敗戦論―戦後日本の核心―』(太田出版)で第35回石橋湛山賞、第12回角川財団学芸賞を受賞。主な著書に『国体論菊と星条旗』(集英社新書)、『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社)、『今を生きる思想マルクス生を呑み込む資本主義』(講談社現代新書)などがある。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 資本論の話』
監修:白井 聡


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