原爆ドームはもともと何の建物?世界遺産に隠された知られざる歴史【図解 広島の話】

原爆ドームはもともと何の建物だったのか

文化拠点から核兵器廃絶の象徴へ

 平成8年(1996)、核兵器の廃絶と世界平和を訴えるシンボルとして世界文化遺産に登録された「原爆ドーム」。この建物は、大正4年(1915)にチェコ人の建築家ヤン・レツルが設計したもので、かつてはレンガ造3階建て(一部5階)のモダンな洋館でした

 同館は当初「広島県物産陳列館」として開館。県内外の物産の収集・陳列、商工業に関する調査・相談などを行うほか、博物館や美術展、講習会などの会場として利用されました。大正10年(1921)には「広島県立商品陳列所」に改称され、現在の全国菓子大博覧会にあたる全国菓子飴大品評会が開催されました。また、昭和8年(1933)には「広島県産業奨励館」に改称され、美術展が盛んに行われるなど広島の文化拠点として大きく貢献しました。

 しかし、昭和12年(1937)に日中戦争が始まった頃から、館内の展示は次第に縮小していき、昭和19年(1944)3月、館の業務は廃止され、戦時行政の事務所に使用されることになりました。

 昭和20年(1945)8月6日、広島に原爆が投下され、奨励館は爆心地から北西160mの至近距離で被爆。しかし、ほぼ真上から垂直に爆風を受けたため建物の中心部は倒壊を免れ、現在の原爆ドームが残骸として残りました。

世界平和のシンボルとなった原爆ドーム

戦後の原爆ドーム

 戦後、旧産業奨励館の残骸は市民から「原爆ドーム」と呼ばれるようになり、建物の存廃論議が重ねられました。そして昭和41年(1966)、広島市議会が原爆ドームの保存を要望する決議を行い、昭和42年(1967)に第一回保存工事が行われました。その後、世界遺産として登録された原爆ドームは、広島平和記念公園の一部として、核兵器廃絶と世界平和のシンボルとして保存されています。

【広島平和記念公園内にある「平和の灯」】
昭和39年(1964)の点火以来、核兵器が地球上からなくなる日まで燃やし続けることを目的に、原爆の火をともし続けている。

【広島平和記念資料館と噴水「祈りの泉」】
資料館では、被爆者の遺品や写真、当時の惨状を物語る貴重な資料を展示し、核兵器のない平和の世界の実現を訴え続けている。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 広島の話』監修:佐々木卓也

【監修者情報】
佐々木卓也(ささき・たくや)

野外歴史地理学研究家。第35回広島文化賞受賞(平成26年度)。昭和29(1954) 年8月1日、広島市佐伯区生まれ。間学苑:時空人論研究所主宰、ひろしま歴史街道トリップ実行委員会座長、広島地名研究会事務局代表、石垣を讃える会代表世話人、棚田学会会員(元監事)、広島市内公民館活動団体指導員、中国新聞文化センター専属講師。広島県立広島観音高等学校卒業、奈良大学文学部地理学科卒業、広島大学大学院文学研究科研究生終了、京都大学教養部人文地理学教室研修員修了。国立呉工業高等専門学校・国立広島商船高等専門学校・国立大島商船高等専門学校・広島修道大学短期大学部講師を歴任。広島県史編纂室第三部会委員・広島市教育委員会調査委員・奈良広島両県町村史編纂委員を歴任。主著『芸備両国の条里遺構』(溪水社)、共著『広島県地名大辞典』(角川書店)、『日本地名基礎辞典』(日本文芸社)、『日本石造文化事典』(朝倉書店)ほか。専門は歴史地理学・地域民俗学・文化人類学・日本地名学ほか。趣味は歴史街道散策・石垣景観探訪・旅行企画策定など。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 広島の話』
監修:佐々木卓也


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