なぜヒナはすぐ歩ける? 鳥の成長速度は「早成性・晩成性」で違う【鳥検定公式ガイドブック 鳥の教科書】

鳥のヒナの成長

ヒナとは、ふ化してから間もない、成長初期の鳥のことです。鳥のヒナは、ふ化した直後の発達段階によって、ふ化後まもなく歩くことができる「早成性」と巣の中で親の世話を受けながら成長する「晩成性」に分けられます。実際には、その中間的な特徴をもつ種もあり、発達段階をさらに細かく分類することもあります。また、ヒナの成長のしかたは、親の子育ての方法や繁殖行動とも深く関わっています。

羽毛におおわれた早成性と、羽毛が少ない晩成性

 卵からかえった時点で、目が開き、体が羽毛でおおわれ、すぐに歩き回れる状態のヒナを「早成性」といい、ふ化後まもなく巣を離れ、親について移動します。食べものをついばむことは自分でできますが、見つけるには、親の助けが必要です。カモ類、シギ・チドリ類、キジ類、ダチョウ類などのヒナが
早成性に分類されます。

 一方、ふ化した時点では、羽毛がないか、あってもまばらで、目も開いておらず、自力で移動できない状態で生まれるヒナを「晩成性」といいます。ふ化後は巣の中にとどまり、親鳥から食べものをもらいながら成長します。スズメ目、キツツキ類、ハチドリ類、ハト類、インコ類、オウム類など、多くの鳥で見られるタイプです。

 ほかにも早成性・晩成性の中間的なタイプがあります。ツカツクリのヒナは、ふ化後すぐに飛ぶことができ、親の世話を受けずに生活する「超早成性」タイプです。

 早成性であっても、食べものは親鳥から与えられる「亜早成性」タイプもいます。クイナ類、カイツブリ類、ツル類、アビ類などが代表的です。

 また、ふ化したヒナが自力で体温を保ち、歩くこともできるものの、親から給餌を受けて育つタイプを「半早成性」といいます。カモメ類、アジサシ類、ミズナギドリ類、ペンギン類などのヒナがこれにあたります。

 さらに「半晩成性」タイプもあります。ふ化したヒナは羽毛が生えていますが、親鳥から食べものをもらって育ちます。サギ類、ワシ・タカ類、フクロウ類、ウ類などのヒナがこのタイプです。

ヒナのタイプで変わる子育て

 早成性のヒナは、ふ化後まもなく自分で食べものをついばむことができるため、親の負担が比較的小さく、親1羽だけで子育てできる種も少なくありません。そのため、早成性の鳥では、一夫多妻や乱婚の繁殖形態が見られることがあります。

 一方、晩成性のヒナは、親から大量の食べものを与えられなければ成長できません。ヒナを育てるためには雌雄の協力が必要になることが多く、多くの種で一夫一妻の繁殖形態が発達しています。

 また、晩成性のヒナは、両親から集中的に給餌を受けることで急速に成長します。晩成性のヒナの成長速度は、早成性のヒナより3〜4倍速いことが知られています。

ヒナから幼鳥へ

 ヒナが巣立ったあと、まだ成鳥になっていない鳥を「幼鳥」といいます。ヒナの体をおおっていたふわふわした羽毛(幼綿羽)は、換羽によってかたい正羽(幼羽)へと生え換わります。幼鳥は、多くの種では成鳥より地味な色合いをしています。これは、まだ繁殖に参加しない未成熟な個体であることを示すとともに、捕食者から目立ちにくくする役割があると考えられています。

 ただし、種によっては幼鳥と成鳥を外見だけでは区別しにくい場合があります。また、幼羽から成鳥の羽衣へ段階的に換羽する種もあり、幼鳥と成鳥の境界を明確に区分できないこともあります。


【出典】『鳥検定公式ガイドブック 鳥の教科書』著:柴田佳秀/監修:小宮輝之

【著者紹介】
柴田 佳秀 (しばた・よしひで)
科学ジャーナリスト。1965年生まれ。10歳から野鳥観察をはじめる。東京農業大学卒。自然番組のディレクターとして世界各地の鳥類を取材。2005年からフリーランス。図鑑・書籍の執筆や講演、自然番組の監修などに携わる。著書多数。日本鳥学会会員、都市鳥研究会幹事。
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【監修者紹介】
小宮 輝之 (こみや・てるゆき)
1972年多摩動物公園の飼育係に就職。2004〜2011年まで上野動物園園長。日本動物園水族館協会会長、日本博物館協会副会長を歴任する。2022年から日本鳥類保護連盟会長。環境省トキ野生復帰検討会委員、山階鳥類研究所評議員などを務める。

【書誌情報】
『鳥検定公式ガイドブック 鳥の教科書』
著:柴田佳秀/監修:小宮輝之


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