鳥はハンガーで巣を作る?巣作りに人工物を使う驚きの生態【鳥検定公式ガイドブック 鳥の教科書】

鳥の巣のつくり

鳥の巣には、「捕食者から卵やヒナを守る」「抱卵に適した環境」「ヒナの発育の場」「営巣中の親の寝る場所」の主に4つの目的があります。中でもいちばん重要なのは、捕食者から守ることです。親が巣に座り卵を体温であたためている間は、長時間同じ場所に座り続けなければならず、とても危険です。また、無防備な卵やヒナも、捕食者に見つかればひとたまりもありません。そのため鳥たちは、巣の場所や構造にさまざまな工夫をしています。

巣の材料の工夫

 巣の材料には、卵やヒナを支える丈夫さだけでなく、寒さから守る保温性、雨水を外へ逃がす水はけのよさ、捕食者に見つかりにくくするカモフラージュなど、さまざまな役割があります。鳥たちは、枝や葉、コケ、泥、羽毛、クモの糸、さらには人工物などを巣材として利用します。材料を積み重ねたり、絡ませたり、貼り付けたりしながら、それぞれの性質をうまく生かし、くらす環境に適した巣を作っているのです。 

【コケ・地衣類や羽毛で作る】

エナガはコケや地衣類とクモの糸を使って巣を作ります。コケや地衣類でおおわれた巣の表面は、木の幹の色とそっくりになるのでカモフラージュ効果があり、捕食者が見つけにくくなります。また、巣の中にはたくさんの羽毛が入っていて、卵やヒナを寒さから守っています。

【泥で作る】

岩や崖、建物の壁に巣を作るには、泥のような粘着性のある素材が必要です。ツバメの場合は、湿った泥をだ液と混ぜて壁にくっつけて巣を作ります。また、藁などを混ぜることで巣に強度をもたせる工夫もします。都会では湿った泥があまりなく、ツバメが営巣できない原因の一つになっています。

【人工物で作る】

都市では、枝の代用品としてハンガーを利用しているわけではなく、ハンガーを積極的に利用している鳥がいます。そうすることで、巣がとても頑丈になるからです。ハンガーを使うのは巣の外側だけで、卵を置く内側は樹皮や毛などの柔らかい素材で作ります。

巣の場所の工夫

 鳥の巣といえば、木の上に作るというイメージが一般的でしょう。確かに高い木の上は、ほ乳類などの捕食者が近づきにくく安全です。そのため、多くの鳥たちは木の上に営巣します。一方で、木の上以外にも、地上に巣を作る鳥や、人家に巣を作る鳥もいます。このように鳥たちは、それぞれのくらしに合わせて安全な場所を選んで巣を作ります。

【高い木の上の巣】

ハシブトガラスがケヤキの高い枝に巣を作っています。地上から距離があり、ほ乳類の捕食者が近づきにくい安全な巣です。ただし、巣の中が上からは丸見えなので、鳥やヘビには見つかってしまいます。

【木の穴の巣】

キツツキなどは、木の枝や幹に穴を掘って巣を作ります。穴の巣は中が見えないのでより安全です。自分で穴が掘れない鳥は、キツツキの古巣や自然にあいた穴を使います。しかし、そんな穴は数が少なく、常に不足しています。また、ヘビに対しては無防備です。

【草の中の巣】

地上に営巣する場合は、草の茂みなどに隠すように作ります。親鳥が動かなければまったくわかりません。上の写真で、カルガモが巣に座っているのがわかりますか?

【人家の巣】

ツバメのように人家に巣を作ると、人がガードマンの代わりとなって、捕食者が近づきにくくなります。また、猛禽類や肉食ほ乳動物の巣や巣穴の近くに営巣する鳥もいます。猛禽類や肉食ほ乳動物がガードマンの代わりをして、捕食者が近づきにくくなります。


【出典】『鳥検定公式ガイドブック 鳥の教科書』著:柴田佳秀/監修:小宮輝之

【著者紹介】
柴田 佳秀 (しばた・よしひで)
科学ジャーナリスト。1965年生まれ。10歳から野鳥観察をはじめる。東京農業大学卒。自然番組のディレクターとして世界各地の鳥類を取材。2005年からフリーランス。図鑑・書籍の執筆や講演、自然番組の監修などに携わる。著書多数。日本鳥学会会員、都市鳥研究会幹事。
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【監修者紹介】
小宮 輝之 (こみや・てるゆき)
1972年多摩動物公園の飼育係に就職。2004〜2011年まで上野動物園園長。日本動物園水族館協会会長、日本博物館協会副会長を歴任する。2022年から日本鳥類保護連盟会長。環境省トキ野生復帰検討会委員、山階鳥類研究所評議員などを務める。

【書誌情報】
『鳥検定公式ガイドブック 鳥の教科書』
著:柴田佳秀/監修:小宮輝之


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