幻のアジア縦貫鉄道構想!東京から大陸を目指した戦前の「弾丸列車計画」と広島の痕跡【眠れなくなるほど面白い 図解 広島の話】

\広島の「交通」と「地理」のトリビア/

日本列島と大陸を結ぶ「弾丸列車」の痕跡

戦前の「新幹線計画」跡を伝える杭

 戦前の日本では、1930年代後半から1940年代にかけて、軍事・経済目的で立案された、東京-下関間を9時間で結ぶ高速鉄道計画がありました。現在の新幹線の原型となる、通称「弾丸列車計画」です。この計画は、東京と下関を結ぶだけでなく、九州を経由して海底トンネルで朝鮮半島、満州、さらには東南アジアまでのアジア全域を一本の高速鉄道でつなぐ「大東亜縦貫鉄道」の一部として構想されました。 昭和15年(1940)、第22回鉄道会議において「東京・下関間新幹線増設に関する件」が承認され、翌年に工期15年で着工。各地で用地取得や測量、トンネルの掘削などが進められました。

 広島県下でも、計画路線に入っている地域でルート選定や技術的調査が行われ、廿日市市内では鉄道用地の範囲を示す枕木を使った杭が東西にわたって打ち込まれました。しかし、昭和18(1943)、太平洋戦争の激化に伴い資材や人手が不足したことで、計画は中断を余儀なくされました。

 廿日市市佐方の洞雲寺周辺には、近年まで「弾丸列車計画」の痕跡である「枕木の杭」が田畑に残されていました。その後、廿日市駅北土地区画整理事業によりほとんどの杭は取り除かれましたが、その一部は自治会の手によって今も洞雲寺公園前に残されています。

幻の弾丸列車計画

弾丸列車と満鉄あじあ号

「弾丸列車計画」では、時速150~200kmの高速列車で、東京-大阪間を約4時間半、東京-下関間を約9時間で結ぶ予定でした。この新型車両の開発にあたって参考にされたのが、当時、南満州鉄道(満鉄)を走っていた特急「あじあ号」で、最高時速130kmを記録していました。あじあ号は、のちの新幹線の技術的基礎となりました。

新型車両「HD53」と「HEH50」

「弾丸列車計画」における新型車両は、蒸気機関車HD53と電気機関車EH50が検討されており、HEH50は当時世界最高時速の210kmを目指していました。しかし、発電所や送電施設といった基礎設備の問題や、敵軍による変電所の爆撃を軍が懸念したことなどにより、HD53で最高速度150kmを目指す案が採用されました。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 広島の話』監修:佐々木卓也

【監修者情報】
佐々木卓也(ささき・たくや)

野外歴史地理学研究家。第35回広島文化賞受賞(平成26年度)。昭和29(1954) 年8月1日、広島市佐伯区生まれ。間学苑:時空人論研究所主宰、ひろしま歴史街道トリップ実行委員会座長、広島地名研究会事務局代表、石垣を讃える会代表世話人、棚田学会会員(元監事)、広島市内公民館活動団体指導員、中国新聞文化センター専属講師。広島県立広島観音高等学校卒業、奈良大学文学部地理学科卒業、広島大学大学院文学研究科研究生終了、京都大学教養部人文地理学教室研修員修了。国立呉工業高等専門学校・国立広島商船高等専門学校・国立大島商船高等専門学校・広島修道大学短期大学部講師を歴任。広島県史編纂室第三部会委員・広島市教育委員会調査委員・奈良広島両県町村史編纂委員を歴任。主著『芸備両国の条里遺構』(溪水社)、共著『広島県地名大辞典』(角川書店)、『日本地名基礎辞典』(日本文芸社)、『日本石造文化事典』(朝倉書店)ほか。専門は歴史地理学・地域民俗学・文化人類学・日本地名学ほか。趣味は歴史街道散策・石垣景観探訪・旅行企画策定など。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 広島の話』
監修:佐々木卓也


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